ツインテール探偵くるみの事件簿
星村探偵事務所の二つ隣に『妄想愛好会』がある。部員は一年先輩の倉田章吾先輩とクラスメイトの能登順平。男だけの話ができると思って遊びに行ってみた。
ゴザの上に座布団を敷いただけの部室で、二人の男が目をつむって座っていた。瞑想ならぬ妄想をしているのだ。俺が来たことに気付いて目を開けた。
「いつもそんなことしてるんですか?」
「妄想は男のロマンだからな」
と、倉田先輩が答えた。
「最近、妄想川柳も始めたんだ」
能登が言うと、
「17歳になったから1年間だけな」
と、倉田先輩が豪快に笑った。
川柳とは俳句と同じ17音字で作られる定型詩のことで、俳句と違って季語がいらない。俺はニュースで世評を反映した時事川柳を聞いたことがあるくらいだ。
「へえ、どんな川柳なんですか?」
と訊いたとき、部屋のドアが開いて、メイド服を着たくるみが覗き込んだ。
「あ、ここにいた。ワトちゃん、かぎ、かぎ」
「また、モデルをやってたのか?」
漫画同好会には色々な衣装があり、くるみは時々コスプレさせられている。
ポケットから事務所の鍵を渡すと、
「あんたたち、あやしいわよ」
と眉を潜めて、出て行った。
作品名:ツインテール探偵くるみの事件簿 作家名:へぼろん