君に追いつきたい
「一人目、水野奈央」
「はい!」
当然、奈央が一人目として呼ばれた。文句なし、ぶっちぎりの一位抜けだ。
「やったね」
「良一君もね」
軽くハイタッチを交わし、あとは自分の名前が呼ばれるのを待つのみとなる。
「二人目……木岡智之」
「はっ……え?」
「は、はい!」
返事をしようとした良一、そして返事が遅れた智之。二人とも、いや、その場にいた全員が首を傾げた。
意味が分からなかった。チームとしての結果も、守備も、自分の方が上だった。打撃結果だって負けていない。しかし呼ばれたのは良一ではなく智之だった。
「では、今呼ばれた二人は明日からAチームの練習に参加するように。基本的に他の者は基礎体力作りと練習の手伝いだ。では、今日はこれで解散……おう、そうだ。一つ忘れていた。朝日」
「はい!」
やはり自分も選ばれるのだろうか。一度失った希望が再び輝き、返事の声も弾む。
しかし監督は、良一の方を見ることなく静かに告げた。
「守備練習をすることがあれば、これからはショートに入れ。朝日はショートにコンバートだ」