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連載 たけこさん (終)

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7話 夫婦円満のコツ


【夫婦円満講座】
なるものが近くの公民館で開かれることを知った岳子は、それに応募した。
 最近、ずっと顔を突き合わせている富士夫とは言い合いばかりしていて、いささか疲れてもきているのだ。その存在に。
 持ち物にジャガイモ1個、とあった。


「みなさん、ジャガイモを持って来られましたね・・・それでは1分間差し上げます。その間に各自お持ちのジャガイモを見つめながら、優しく語りかけてあげてください。どうぞ」

 えっ? ジャガイモに何を語るの?
 まわりの人もキョロキョロしていたが、やがてぼそぼそという声があちこちで始まった。
 あいさつや、自己紹介みたいなのをしているらしい。
 岳子も簡単なあいさつから始めて、自己紹介を続けた。ジャガイモ相手に。ジャガイモをいじり、そして眺めながら。

「はい、それまで。じっくりとお話は出来ましたか・・・それではそのジャガイモをこの袋に入れてください」

 透明の袋を持って講師は、20人の受講者の間を回って集めた。
 そして、前に置いてある机の上にそれをぶち明けた。

「みなさんが持って来られたジャガイモはどれでしょうか。こちらへ来て、連れて帰ってあげてください」

 え―っ、そんなん分かるかなぁ、と言いながら、それでも迷うことなく全員が1個ずつ取り上げた。

「そうです。見つめながらお話をすると愛が湧いてくるのです。だからみなさんはためらうことなく、持って来られたジャガイモを見つけ出せたのです。これが夫婦円満のコツ、と申しましょうか……」


 家に帰ると、富士夫は相変わらずテレビを見ていた。
 じっと見つめながら今日の話をしようとしたが、できなかった。
 今さら、である。

「わしの面になにくらいついとるんや」
「いえ、メークインやのうて、ジャガイモでしてん」