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VARIANTAS ACT 17 土曜の夜と日曜の朝

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「私はね、寝たいと思った人がいたの。猛烈に求めた人が。彼も拒まなかった。大戦中で、彼は兵士。戦いから帰って来れば必ず求めあって一晩中愛し合ってた。私は思ってた。側に居たい。支えになりたい。役に立ちたい。どれも建前は違うけど、中身は全て同じ。“愛したい、愛されたい”。男女の友情? 笑っちゃうわ。神様はね、男と女は結局愛し合うように創っているのよ」
「なら…、彼は私と寝たいと…?」
「それは分からないわ。でも、彼もあなたと同じなんだと思う。失うのが恐い。忘れたいと思っていても、忘れてしまうのが恐い。指輪を外してしまえば、なにもかもを忘れてしまうかもしれない。それが恐い」
「待たなきゃいけないのかしら…」
「彼を変える自信ある? あなたが目印になって彼を導く自信が」
「無いわ…。でも…、そんなのずるい」
「ずるい?」
「男の人はどんどん変わっていけるのに、女には変わらずに待ってろだなんて…そんなのずるい」
 レイラはそう言って、視線を遠くにやる。
 エレナが言った。
「彼ね、私に待つなって言ったの。それで私は、彼の元を去ってしまった」
「待つなと言った彼の、気持ちは分からないけど、やっぱり二人で居た方が幸せだと思う」
「そうね…」
 話に夢中になり、気付けばグラスの中には氷が溶けた、水の層が出来ていた。
「薄くなっちゃったわね」
「いいわレイラ、飲み直しましょう」
 二人は先程と同じ物を注文し、グラスを傾ける。
 レイラが問う。
「何へ乾杯?」
 エレナは答えた。
「全ての待つ女性へ」




***************





「エースのファイブカード」
 ビンセントが綺麗に揃ったトランプカード五枚をテーブルの上にオープンする。
「ダァーッ! またビンセントの一人勝ちかよ!」
「旦那馬鹿強っすよ!」
 ぶー垂れるハリーとサブを尻目に、ビンセントはテーブルの上の紙幣を掻き寄せた。
 ハンガーでカードに興じる三人。
「お前らとはツキが違うんだよ。ハリー配れ」
「ツキじゃなくってイカサマっぽいっす。クローズド? スタッド?」
「機体に爆弾しかけちゃる。クローズド」
 各自、配られたカードを見てベット。
「酒でもありゃもっとよかったがな。二枚」
「駄目ですよ旦那、当直でしょ。四枚」
「次こそコロス。三枚」
 ビンセントがニヤリと笑う。
「おい、ハリー。そういえばユリアがお前と遊びに行きたいって前言ってたぞ」
「まっ、マジっすか?」
 動揺するハリー。
「え、ハリーお前貧乳好きなの?」
「ちょい、お前…」
「いや、サブさん。貧乳好きとかそんなんじゃ…」
「おい、お前も…」
「ハリー…、オッパイは大きくてナンボだろう? なぁビンセント?」
「今まで無視しといてアレか? 今になってオッパイネタを俺に振るのか」
「いいから、お前はどっちなんだ。大が小か!」
「尻」
 拍子抜けするサブとハリー。
「あ、あれぇ? あの留置所でのオッパイ音頭はなんだったんっすか?」
「いやぁよ、正妻と愛人は違うだろ?」
「お前アホだろう? イオちゃんを見てみろよ。あのはち切れんばかりのミルクタンク! 天然のエアバックだぜ、ありゃあ?」
「確かに揺れる。潔く揺れる」
「胸ならあの人が居るじゃないっすか」
「誰よ」
「エレナさん」
「ハリー…、お前…」
「ありゃあ規格外だろ」
「ああ、ビンセント。あれは語るまでもねぇ。ありゃあ歩くセックスアピール…、いやエロスそのものだ」
「ああ。あの長身に長い脚。細い腰にでかい胸。神は彼女に二分も三分も与えたもうた。まあ、俺は尻だがな」
「尻なら誰よ」
「レイラかな? ガルスんトコの。あとはグレンちゃん。想像してみ? あの豊満なヒップが歩く姿を。一歩踏み出す度に左右の大臀筋がスカートを内側から持ち上げ、ラインが浮き出る、その姿を!」
「ふ…、甘いな、ビンセント。一つ教えてやろう。尻は…、挟めないぜ?」
「ユリア姐さん、何気お尻可愛ゴベバッ!」
「…いや、お前こそ甘い。胸はな、垂れる!」
「尻だって垂れるじゃねぇか」
「うっ!」
「胸は美の象徴だぜ? 解っちゃにねぇなぁ…」
「じゃあお前はベッドでも尻を触らないんだな?」
「何ぃ…?」
「それに胸はゴマカシが効く。いざ脱がしてみてガッカリなんてのは真っ平ゴメンだ。だが尻は素材そのものの味が出る」
「でも最近はお尻の矯正下着もあるみたいっすよ」
「そらみろビンセント!」
「くそっ! 黙ってろよハリー!」
「ワシは哀しいぞ、若者達よ」
 ビンセント達の馬鹿騒ぎを聞き付けた術長が、腕を組んで立っていた。
「乳だの尻だの、お前らは思春期のガキか!」
「いや、術長、しかしだね」
「男なら属性に惚れろ!!」
「へ…?」
 呆然とする一同を尻目に、術長は語り始めた。
「清純一筋な春雪ちゃん! 最近小悪魔的なサラちゃん! 天然キャラのイオちゃん! 実はエロいツンデレ学級委員長的なエステルちゃん! 私はいつもここにいますよ的なレイラ嬢! これぞバイセクシャルクオリティなエレナ嬢! いいか、俺だって若い頃にぁ、カーマ・スートラ風にくんずほぐれつ、〇〇に〇〇〇を〇〇〇〇〇…」
「うわぁぁぁぁあ、このジジイ誰か止めろぉぉぉ!!!」

 暗転。

「まぁ、確かに清純な子はイイかもしれん」
「確かにな、ビンセント。春雪ちゃんなんて、うなじが輝いて見えやがる」
「え、サブ春雪ちゃん狙い?」
「例えばだ、バカ」
「そう考えるとグレンちゃんはかなりの高得点かもな。清純で胸もあって尻もなかなか…」
「エステルさん」
 ハリーの言葉に、全員が振り向いた。
「ああ、確かに…性格も色っぽい」
「胸もかなりある」
「脚長いっす」
「尻が良い」
 何やらふやけた顔で天井を見上げる四人。
 しかし次の瞬間…。
「チクショウ、グラムの野郎ぉぉ!! あの尻を好きなように…!」
「あの若造め、固そうな顔してアッチも硬いのかぁぁぁ!」
「エステルさんは…エステルさんはぁ…!」
「自分はどうでもいいっす」
「私が何か?」
 聞き覚えのある声に、一同が凍り付いた。
「エエ、エ、エステルさん…」
 呂律の回らないビンセント。
 エステルの手には、ビニールチューブが握られている。
「あら、私何故こんなもの持ってるのかしら? ねぇ、皆さん?」
 目の座ったエステル。
「ちょっと待て、エステルちゃん」
 ビンセントの言葉を無視して歩み寄るエステル。
「ねえ、どうして欲しいの?」
 逃げられない一同。
 身体が、言う事を聞かない。
 まるで、全身の全神経が凍り付いているようだ。
「ねぇ…」
 ビニールチューブをぎりぎりといわせながらハイヒールの靴音を盛大に鳴らして仁王立ちするエステル。
 もう、限界だ。
「「「「お仕置きしてくださぁぁぁい!!!」」」」
 エステルはニヤリと微笑み、ビニールチューブを振り上げた。
 部屋に響く、ビニールチューブが空気を切る音。
 後に男達は口をそろえて言う。

『エステルさんの鞭責めはマジハンパねぇーっす』