馬鹿じゃない!
結局一時間以上駅で足止めを食らってしまったが、
悟史の話によると電車事故で遅刻した生徒のみ他の生徒が下校後に
テストを受けられるという事だった。
学校に着くとチラホラと下校を始める生徒達とすれ違った。
テストの緊張感から解放されてホッとしている顔や、
明日からもまだ続くテストにうんざりだという顔も見られる。
「よー、おそようさん!まーた電車が止まっちゃったんだって?
オレ達今日のテストは終わっちゃったよーん。タモさんどうすんの?」
健二が教室に入ってくるのを見つけると帰り支度をしていた手を止めて声をかけ
る。
「タモさんっつーな!森田だっつーの」
テスト期間中は席順が出席番号順に変わっている為、普段健二が座っている席に
坂田(さかた じゅん)淳が座っている。
淳は某昼の番組の司会者と同じ名字だっていうだけで、
勝手に健二の事をタモさんと呼んでいる。
「他にも電車が遅れた奴らと一緒に午後からテスト受けるんだとさ。
このクラスは俺と古河以外にも誰かいる?」
さっきまで一緒にいた悟史は他に用があるとかで職員室前で分かれていた。
「はいー?他のクラスには何人か遅刻した奴がいるみたいだけど、
このクラスはタモさんだけだよー」
何言ってんの?とでも言いたそうな顔をしている淳を健二も同じような顔で見返
す。
「はぁ?そんなわけないだろ。さっきまでその古河って奴と一緒にいたんだから」
「あれ~?ちょっとタモさん、怪談話には少し時期が早すぎるんじゃない?」
「何が?」
「だ・か・ら!・・・今日電車が止まったのはアレでしょ?飛び込み・・・。
その飛び込んだ人がコガって名前だとかいうんじゃないだろうね」
わざとらしく肩を抱いて怖がるような恰好をして淳はブルブルと震えて見せた。
「ばかやろう!そんなわけないだろ!
足もちゃんとあったし、さっきまで普通に話もしてたんだよ!」
―君と同じクラスなんだけど?―
ホームで聞いた悟史の言葉を思い出す。
(あれ、だったらあれって何だったんだ。わけわかんねーや)