馬鹿じゃない!
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「またかよ。ったく・・まいったなー」
自分の置かれた状況にがっくりとうな垂れてしまう。
月曜日には多いっていうけど・・・これで何度目だ?
誰に伝えるでもなく零れた言葉に思いがけず返事が返ってきた。
「そうだね。これからどうしようか?」
「へ?」
「ん?だから、電車。止まっちゃったでしょ?さっきの事故で」
おぉっと、そうだった。
今日から中間テストだっていうのに、電車が走らないんじゃ・・・・
「遅刻決定だね。今日のテストは受けられないかな」
「あ、ああ!そだな」
(てか、こいつ・・・誰?)
隣を見ると自分と同じ制服を着た男子生徒。
横顔を見ただけでわかる。イケメン。それも超がつくくらいの。
(見たことあるような気もしないでは、ない。けど・・・)
「とりあえず電話してみよっか、学校。
きっと僕達の他にも同じ電車の奴らもいると思うし、
状況だけでも伝えておかないとね」
「それから・・・初対面の人間を見るような目付きは止めてもらえるかな?
僕は君と同じクラスなんだけど。本当にわからない?」
呆れたように大袈裟に肩を竦めて見せると、
「古河だよ。古河(こが さとし)悟史」
っとフルネームを口にした。
「お、俺は森田(もりた けんじ)健二!」
慌てて名前を言うと、クスクスと笑いながら携帯を操作し、
「知ってる。―――あ、もしもし・・」
と真面目な顔に戻って電話の向こうの相手と話し始めた。
(コガ?こが?・・・いたっけかな?そんな奴)
健二の側から少し離れたホームの端に移動する悟史を目で追う。
(なんだよ、あの超美形。本当に俺と同じ人間なのかっつーの!)