A Groundless Sense(5)(完)
「な、なによ、黙っちゃって。殴るなら今しかないよ?」
「じゃ、お言葉に甘えて」
カツシは右手を挙げた。
泉子は早くも痛そうに目をつぶる。
カツシは挙げた手をそっと前にして泉子の頬にそえ、口づけした。
「!」
泉子はぐっと目を開いて固くなった。
唇が離れ、泉子は涙をためた目でカツシを見上げる。
「ごめんね」
「いいんだ。それよりさ……」
カツシは耳打ちした。
「ヒーラーの修行は手抜きしてくれないかな?」
「え? どうして?」
「だって、記憶がどうのってところまで知れちゃったらさぁ」
泉子は涙をふいて笑った。
「ハハーン。エロ本読んだこともバレちゃうし?」
「バッ、バカ! なら、俺にも考えがあるぞ。隠したBL本とか……」
「あっ! ママの力借りるのはダメっ! 反則っ!」
「っていうか、もうバレてんだろ?」
「たぶん……」
二人はしばらく笑いが止まらなかった。
おわり
作品名:A Groundless Sense(5)(完) 作家名:あずまや