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A Groundless Sense(4)

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「そのくらいのことがないと、記録も伝承も何も残らないなんてことはないよ」
「ま、そういうことにしといてあげるわ」
 釈然としなかったが、カツシは話を先へ進めることにした。
「で、俺たちはこれから、どうするかだ」
 千江は言った。
「シャトルのトンネル……あ、今はシェルターっていうんだったわね。とにかくそれを潰して、常管の侵攻を封じたい、って言ってたわね?」
「四人だけで生きてくつもり?」
 泉子は言った。
「ま、あんた方はいいでしょうけど」
 千江はニヤける。
「茶化さないで!」
「常管がある限り、俺たちの人生は脅かされる。帰って戦おうにも、戦力差がありすぎる」
「敵は常管だけじゃない。常識に凝り固まった人々の意識を変えないと勝ち目はないよ」
 泉子は言った。
 カツシはピンときた。考えるより先にアイデアが浮かんだ。
「それだ!」
「えっ?」
「手榴弾はあと三個、徹甲弾もあと三発だったな。足りるかな?」
「何をする気?」
 千江は泉子と共に注目した。蘭は来客を観察する猫のように三人を見比べている。
「SAITOの壁をぶっ壊す」
 長い沈黙があった。
 さざ波が何度か岸壁を駆け上がった。
 千江は腕組みしてうろつきながら言った。
「ま、仮に武器が足りていたとしましょう。SAITOへはどうやって侵入するのよ。
シェルターの終点はたぶん岡崎の手はずで、ネズミ一匹通さない体制よ?」
「外からじゃ、ダメかな?」
「なんですって!?」


 20


 外の世界を知ってから二週間ほどたった。
 カツシたち四人は、シャトル路線のシェルターの屋上を歩いていた。トンネル部はカンモン海峡の下をいく部分だけのようだ。
 銀色で丸みのあるシェルターの上は、草一本生えていなかった。特殊なコーティングでもしてあるのか、舗装道路のように生き物の気配がなかった。
 高さ五メートルくらいの屋上道は、はじめのうちは快適だったが、やがて高架となり、地面の木々がどんどん小さくなり、いつしか輪を描く鳶を下に見るようになってしまった。今は風がないので立つには立っていられるが、目がくらんで結局は座りこんでしまう。高い上に柵も何もないのだから、たまったものではなかった。
「た、立ちなさい。行くって言ったのはあんただからね」
 千江はへっぴり腰でカツシに言った。
「重要なことを忘れてたよ」
「今さらなによ」
「SAITOのステーションは、十二層の上にあるんだった」
「!」
 千江は尻餅をついた。
 十二層といえば、高さにして二五〇〇メートル以上だ。気象管理された世界とちがって、外界は風が強いことが多く、パターンも読めない。
「高さだけじゃないよ。引き返そうよ」
 汗だくの泉子は、水筒に口をつけた。
 地上の暑苦しさに、一行は出発して一日でもうバテ気味だ。
「ねぇ、これなんだろ?」
 少し先にいた蘭は、足もとを指さした。
 真ん中にハンドルのついた円いハッチのようなものがある。
 カツシは這っていって、ハンドルをまわし、蓋を開けた。
 縦穴があり、タラップが闇の中へのびていた。
 下りていってハンドライトをつけると、そこは行きで利用した保線用の詰め所だった。部屋側にも蓋があるのだが、隠し扉になっていて下からはわかりづらく、さらに上からでないと簡単には開かない構造になっていた。
 カツシは再び屋上に上がって、千江たちに状況を説明すると、作戦を一つ提案した。
「しばらくはシェルターの中を行こう。常管の気配がしたら上に逃げる。どうかな?」
「逃げるくらいなら、撃ち合ったほうがマシだわ」
 千江は言った。
 泉子と蘭はカツシに賛同。
 千江の舌打ちをもって決議は終わった。
作品名:A Groundless Sense(4) 作家名:あずまや