A Groundless Sense(2)
カツシは湧きたつ興奮を抑えられなかった。世界は思っていたより、広いのだ。
泉子は言った。
「それはいいけど、これからどうするの? ここには何の設備もないよ。食べ物だって水だっって……」
「水とトイレなら、あるわ」
「えっ?」
「保線員のために備えてあったのよ。ここはまだSAITOの管轄だから、システムが連動したまま残ってるのかもしれない。蘭が生きてこられたのが、何よりの証拠でしょ?」
トンネル内は、指定の場所に非常食を保管する義務もあった。事故は滅多になかったというから、使われずに眠っている食料があるかもしれない。何しろ閉鎖から時間が経っているので、賞味については保証できないだろうが……。
夜が明ければ、SAITOに厳戒態勢が敷かれることだろう。もう後戻りはできない。
カツシは蘭を背負うと、手掘りの通路に目をやった。
「ミナト……」
千江は再生所から持ち出してきた背嚢を背負うと、平らなレールの上を、ペンライトで照らして歩いていく。
「取り返したかったら、生き延びなさい」
「クッ……」
カツシは奥歯をかみしめ、泉子に付き添われながら後につづいた。
作品名:A Groundless Sense(2) 作家名:あずまや