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黒竜と彼のご主人さま

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Ⅰ 出会い




彼との出会いは、今でも覚えている。




その日、ルークは他の兄たちの後ろにくっついて歩いて行った。
まだ幼かったルークは初めて通る家の廊下が物珍しかった。

ルークの家は名家で、兄たちを始め、父親も祖父も、また三人の姉も騎士団に所属していた。
所謂騎士道一家だった。
先祖の活躍を誇らしげに熱く語っていた父の言葉が忘れられない。

『――彼は、勇敢に町を守り、王を守り、命を守った。その勇敢さを称えて、龍は彼と契約することを許した』

龍に加護され、龍と供に戦う。
その証として、家の紋章には一振りの剣に巻きつく龍が描かれていた。

ルークの家がこうして権力を持てたのは一重に龍のおかげであった。
その為龍に関することは何においても最優先される。
龍のための貢物、部屋、調度品。
自分たちのものよりもはるかに豪華絢爛なものが用意されていた。
龍専用の部屋は屋敷のもっとも深い所にあり、許可なくしてその付近に近寄ることも固く禁じられていた。
その為こうしてその部屋に向かう廊下が、初めて通るルークにとっては珍しかったのだ。
ピンと張りつめた空気に心なしか前を歩く兄たちから緊張が伝わる。
軽々しく口を開こうものなら、きっと怒られてしまうに違いない。

そうこうしているうちに、目的の扉の前についた。
龍の間の濃い赤銅色の扉はいかにも重そうで、ドアノブは金色に輝いて龍を模っていた。
長兄が唾を飲み込むのが聞こえた。
「失礼します!」
意を決してその重い扉を開いた。

作品名:黒竜と彼のご主人さま 作家名:青海