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鋼鉄少女隊  完結

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「お断りします。私が男になるのはお断りって意味。でも、私達ずっと友達だよ。女同士でもずっと一緒に居ればいいじゃない」
 麻由は手を伸ばして、雪乃の手を握る。
「いいの? 私の手、魚つかんだから生臭いよ」
「いいのよ。雪乃は私の永遠のリーダーだから、つながっていたいの」

 その年の暮れ、ケーニヒスティーガーのコンサートがキャパ2000人のホールで行われた。
 冒頭の一曲としてアニメ主題曲の「ケーニヒスティーガー」をやった後、ボーカルの藤崎彩がMCに入る。
「お集まりの皆さん! ケーニヒスティーガーです。一曲目はおなじみのアニメ鋼鉄少女隊のテーマ、ケーニヒスティーガでした。さて、本日は我がケーニヒスティーガーのリーダー村井雪乃より緊急発表があります!」
 ドラムの位置にいた雪乃が前へ出てくる。おなじみのドイツ軍将校の帽子に黒のアイパッチで片目をふさいでいる。そして、ファンを友軍と呼ぶ以前の口調で語り出す。
「友軍諸君! 本日結集してくれたこと、深く感謝する。さて、諸君らに発表したいことがある。本日づけをもって、ケーニヒスティーガーに新兵が入る。ポジションはキーボード。本日よりケーニヒスティーガーの音にキーボードが加わる! キーボード、戸田明日香!」
 舞台下手から、先日までピュセルのリーダだった戸田明日香が、他のメンバーと同じ黒のコスチュームで登場する。
 藤崎彩卒業後、ピュセルのリーダになっていた戸田明日香はピュセルを秋のコンサートツアーを最後に卒業したのだ。丁度、藤崎彩が去ってから一年居続けたことになる。ピュセルにはさらに、十二期の新メンバーが加入し、六期の高見舞が新リーダになっている。

 戸田明日香はベージュ色の細長いい筒状のものを紐で縛って背負っていた。それはアニメ「鋼鉄少女隊」の最終回で登場人物の宮野曹長が背負って脱出した、パンツァーファウストだ。あの旧ドイツ軍携帯式対戦車用無反動砲をモデルガンメーカが作ったレプリカだ。
 マイクを持たされた明日香が開口一番、後を向いて客席に背中のパンツァーファウストを見せる。
「あのー、これ本当に背負わなくちゃいけないんですか?」
 客席からどっと笑いが起きる。
「新兵は背負うことになっている。そういう規則だ。ただし、演奏中は降ろしてもよし!」
 明日香は、口の中でぶつぶつ呟きながら、ベージュの筒を降ろして舞台上に置き客席に呼びかける。
「皆さん! 私、戸田明日香、一年遅れましたが、本日、着任しました!」
 明日香は直立不動で客席に向かい敬礼をする。
 観客達が沸く。

 明日香はキーボードの前に行き、雪乃がさらに続ける。
「これで、ピュセル内ユニット鋼鉄少女隊の演奏メンバーは全てピュセルを卒業し、こちらに移籍した。よって、ケーニヒスティーガーは、本日より鋼鉄少女隊を名乗る!」
 客席いっぱいに大きな歓声が響く。

「では、鋼鉄少女隊としての新曲をやるにあたり、ポジションの変更を行う!」
 ギターの吉村由衣と雪乃が交代した。吉村由衣がドラムを担当、雪乃がリードギターとなる。彩もギターを持つ。雪乃はMC用につけていた帽子とアイパッチを外す。
「では、鋼鉄少女隊新曲、GOZE!」
 二つのギターが津軽三味線を思わすような、激しいギターリフを刻む。
 雪乃と彩が瞽女唄思わせる、地を這うような低く太い声で歌い出す。
 
 鋼鉄少女隊の音楽は海外で高く評価された。鋼鉄少女隊はこの先10年続いて、雪乃が29才のときのアリーナコンサートをもって解散した。
 その後も、村井雪乃は音楽だけではなく、様々な分野で活躍した。
                 (了) 
作品名:鋼鉄少女隊  完結 作家名:西表山猫