SNOW - side R -
見ると少女が自分の手を握っていた。
半分以上顔をマフラーに埋めて、恥ずかしそうに頬を染めていた。
たったそれだけのことに、胸が温かくなる。
「寒いだけだ」
そっぽを向いて少女は無表情に言う。
「わかってるよ」
涼は雪が嫌いだ。雪なんか降っても良いことはない。
でも今だけはこの雪が降り続ければいいと思う。
いつもはそっけないこの少女が、雪の冷たさを理由にして自分を求めてくれる。
だからもっと、今だけは雪が降り続ければいいと思う。
作品名:SNOW - side R - 作家名:夢宮架音