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SNOW - side R -

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はらはらはらはら…


大きな白い花のような雪が、音もなく降り積もる。
灰色の空は雪が止む様子を見せない。


涼は雪が嫌いだった。
寒いし。
足元はぐちゃぐちゃになるし。
滑るし。
雪が降っているだけで外に出るのが嫌になる。
雪が好きだと言っている奴の気が知れない。
良いことなんか一つもない。

ずっとそう思っていた。


雪が降り積もる中、一人の少女がたたずんでいた。
感情をうかがわせない表情で、雪の降り積もる様をじっと見つめていた。
その姿は素直に綺麗だと思う。


ふと思う。
あの少女は雪のようだと。

綺麗なくせに自分の容姿に無自覚で。
素でいるときには、他人を突き放す冷たい言葉を吐く。
そのくせあの少女の持つ心は驚くほど繊細で、脆いものだった。
他人の何気ない言葉に傷つき、時には自分で吐いた言葉にさえ傷つく。

守ってやりたいと思った。
何にも傷つくことがないように。
彼女が笑っていられるように。

「浅葱」

名前を呼べば、少女はすぐに振り返る。

「何してんだ。風邪引くぞ」

歩み寄ってその首にマフラーを巻く。
するといつもは無表情なその顔に、どこか嬉しそうに微かに笑みを浮かべる。
満開のとまではいかないが、時折にしか見せないその笑顔に頬が緩む。

「ほら、行くぞ」

そういって手を差し出してみる。

「…恥ずかしい奴」

少女が冷たく言い返す。
この美しい少女が素直でないことは十分に承知している。
それでもやっぱり少しムッとする。
自分の表情を読み取ったのか、少女の表情が一瞬だけ微かに曇る。

「行くぞ」

ぶっきらぼうに言って、少女は自分の横をすり抜ける。
自分を置いてさっさと歩き出す。
少女が素直でないことも、好意を示すことに慣れていないのもわかってはいるが、やはり冷たい態度を取られると淋しいのも事実だ。
思わず一つため息をつく。

涼は何も言わずに少女に歩み寄る。
雪の中で背を向ける少女はいつもより細く、頼りなく見えた。
そんな少女を守ってやりたくて、涼はいつもよりも近い位置で少女に並ぶ。
なんだかんだ言っても、涼はこの少女が大切なのだ。

ふと、手のひらに冷たいものが触れた。
作品名:SNOW - side R - 作家名:夢宮架音