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四神五獣伝一話 2/2

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「あなた、本当に何も教えられていなかったのですのね。」
 俺の何も知らなさに和泉は呆れたような口調で話したが、すぐに
「これからのことを考えると無理もありませんが…」と小声で呟いたのを聞き逃さなかった。
 とにかくこのままでは人目が付く。ひとまず俺の部屋まで二人に同行して(運んで)もらおう。

 大広間に寝かせてもらってから、先程と同じ質問を二人にした。
「あの、さっきも聞いたけど…」
「分かっているよ。でも、ますは私に神話の話をさせて。」
 俺が話し終える前にかがりが、すかさず口を開いた。
 難しい話が続けられたので、要点を話すと。

 かつて世界は、天空に「神獣」が存在し人々を見守っていた。
 彼らは、まず夜明けに太陽を呼び周囲を明るくした後、日没には月を呼び周囲を静まり返した。
人々は、神獣を自分達を見守る「平和」の象徴としてを大いに崇めた。
 しかし、しだいに神獣を支配したいと思う支配欲が生まれ始め、神獣を利用して世界を侵略しようと企む悪しき者達が現れた。世界の平和と神獣の安住を願う人々は、力を合わせ悪しき者に立ち向かった。
 悪しき者達は禁断の呪法を使い恐ろしい魔物達を誕生させた。世界を又に駆けた戦いで、世界は崩壊の危機を迎えようとしていた。そこに平和を願う者達の中から「神秘の力」を持つ者が現れ、悪しき者達を退治した。こうして世界に平和が戻った。
 人々は、世界を救った者達を英雄と称え、争いが二度と起こらぬようこの争いを戒めとして祖先に語りついできた。

「これが、今日まで伝えられている神話の内容。神話と言われているけど、全て遥か大昔に起きた実話だ。」
 かがりの説明を聞き終えてもまだ完全に理解できなかったが、おおまかのことは分かった。つまり、昔世界を支配しようとする悪者がいて、戦争が起こったがそれを止めた英雄達がいたってことであろう。
 要約し過ぎかな?
 さらに、かがりは説明を続けた。
「その後、英雄達は各々の国に散らばり自分達の力を子孫に受け継がせたんだ。その英雄の持っていたと言われる『神秘の力』こそが魔法や魔法器、そう聖獣使いで、私達がその聖獣の力を持つ子孫なんだ。そして英雄達が散らばった国の中に、私と和泉の故郷や君の故郷である神楽町があったんだ。つまり私達のご先祖は、大昔の世界を救った聖獣使いだったんだ。」
かがりは、全て説明し終えてゆっくりと深呼吸をした。それにしても大昔とはいえ、過去の世界にそんなことがあったなんて未だに信じられない。まるで、どこぞのファンタジーの世界観だよ。
しかも俺が英雄の力を受け継いでいただと、これじゃよくあるRPGのお約束のパターンじゃないか。
「あなたが持っているそのアメジスト飾っているネックレスが、聖獣使いの子孫の証ですわ。けれどもあなたやわたくし達の両親の時代はまだ、悪しき者が現れない平和な時代だったのでしょうから、あなたの両親はあなたに神話や神獣に英雄達、そして聖獣について話すのは、余計に辛かったのでしょう。」
 俺の気持ちを見抜いたかのように和泉が声を掛けたが、今彼女はとんでもないことを言ったような気がしたので、すかさず和泉に食いついた。
「和泉!さっき君は、両親の時代は悪しき者がいない平和な時代と言ったけど、それはどういうことだ。まさかあの化け物どもは、その悪しき者が操っていたとでもいうのか!?」
「落ち着きなさい。」
 俺の食いつきに押された和泉が、俺をなだめた。俺も和泉の言われた通り呼吸を整えた。
「そのまさかですわ。今、人知れずに再び悪しき者が現れているのですの。そして、わたくし達が英雄の子孫であることを勘付いてあの魔物達を仕向けたのですわ。」
「じゃ、あのコウモリ達は…」
「あぁ、そいつらの刺客だろう。最もまだ私達がヒヨっ子だと思って、あんな小物をよこしたのだろうけど。」
 あまりにも急展開に、開いた口がふさがらなかった。
「なんだか、とんでもないことに巻き込まれてきたなぁ。」
「大丈夫だ。なんせあるじは、最も強い聖獣を受け継いでいるから。」
 不安がる俺を、励ましてくれるかがりだが、俺が最も強い聖獣を受け継いでいるだと?
「まさか、君が俺をあるじって呼んでいるのは…」
「そう、今はまだひ弱だけど、君ならきっと最強の聖獣の力を覚醒させることができるはずだ。だから、これからよろしく!!」
 屈託のない笑顔を俺に向けたかがりは、本当に可愛らしくおかげで不安は少しやわらいだ気がした。
 そうだな、こんな可愛い女の子達が頑張っているんだ。「あるじ」である俺が不安がってどうする。
「では話も終わったことですし、早速着替えを持ってこなくてはなりませんね。スイも待たせていることですし。」
「そうか、もうすぐで十二時になるのか。長居させて悪かったな。」
「そうではありません。これからこの神楽荘で生活するのですもの。」
 和泉がいきなり、凄いことを平然と言った気がしたが…
「だって、同じ聖獣使いの仲間であるあなた達が、ここで暮らしているんですもの。」
「この神楽荘は、私達の言わば住まいや拠点みたいなものになるんだな。」
 かがりも相変わらず屈託のない笑顔で言った。
 あれ、今この状況ってとんでもないことになっていないか。今この神楽荘にはリナ従姉さんの学会の研究員は誰も宿泊していない。そして、俺より前から住んでいるかがりはもちろん、和泉もこれからここの住人になるわけだ。
 つまり、これから俺はこの神楽荘で一緒に暮らすことになるのか?こんな美少女二人と…
「…」
「なんですとぉーーーーーーーー」
作品名:四神五獣伝一話 2/2 作家名:トシベー