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詰めの一手・問題編

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きっかけは、クラス内の囲碁部員の話だった。それを、センセーショナルに報道したのがきっかけだ。

『打たずの天才棋士現る!』

 この記事が出始めたときは、あまり大衆ウケはしなかった。
二週間後。
全試合不戦勝と、前代未聞の勝ち方をした渋川は一躍時の人となる。

『次期代理実行局メンバーに近い! 打たずの本因坊!』

この見出しの号は飛ぶように売れた。そして、当時の代理実行局のメンバーもその記事を読んだ。
近年、『飾りの生徒会。実務の代行』と呼ばれるほど、生徒会のお飾りっぷりは有名である。

変わりに、生徒の悩み相談から、各部への部費の分担、更には教師陣への各種折衝に、果てはスピーチ原稿のゴーストライターまでこなす万能集団として活躍している。代理実行局が学園の実質的運営をしている。

おかげで、代理実行局のメンバーというのは学内で一種のステータスとなっている。
その次期メンバーとして渋川は新聞部に勝手に持ち上げられていた。
しかし、実際は選ばれなかった。
また、全勝不戦勝も偶然と片付けられたが、渋川の実力を知る囲碁部のメンバーは今の代理実行局メンバーに疑問を持つものも多い。

 それ程に、この渋川という生徒は優秀なのだ。
全戦不戦勝というのは本人曰く、「最初の偶然に、偶然が重なっただけ」だが、都合よくそんなに偶然が重ならない事は、十数年生きていればサンタクロースが実はいないくらいに分かる事だ。

その偶然を、運よく重なるように見えない所で動いただけ、というのが周りの一致した意見である。

渋川は代理実行局のメンバーには選ばれなかったが、その高い能力を買われた代行を手伝っている。
作品名:詰めの一手・問題編 作家名:浅日一