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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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『豊葦原の千五百秋の瑞穂の国は、
   是れ吾が子孫の王たるべき地なり。
   宜しく爾皇孫、就きて治せ』





 紅蓮の陽炎と穢れた焔。腥い怨嗟が、甦る。


 少年は戦場にたたずんでいた。
 そしてただ、祈りを、捧げていた。
 目の前に広がるのは、虚ろな空しさだけが残る血まみれの大地――これが、我々の望んだ答えだったのだろうか。戦いは、いつになったら終焉を迎えるのだろう。
 ――何と、呼べばいいだろう。
 まざりあう接点をもたないがゆえに、苦しみもがき、痛めつけ、傷つけ、抉りあい、穿ちあわなくてはならないその哀れで愚かな存在たちを、何と呼ぶべきか。
 ――そう……たとえばそれらを光輝と冥闇と――そう、呼ぶ。
 冥闇は光輝に焦がれ、焦がされ狂っていった。
 光輝は冥闇を求め、求めさせられ歪んでいった。
 両者は果てしなく傷つけあい、傷を舐めあった。それは縺れ合う糸のように、ほぐれることを知らず、どこまでもどこまでもひたすら絡み合う。尽きるところを知らない。果てる場所もわからない。
 ただ連綿と、遠い記憶、閉じた連環だけがあった。
 懐古するが、終りがない。
 炎獄のような緋い火の海があたりを染め上げ続けた。地には悲鳴と哀願が満ち満ちており、天は黙してそれらの醜悪な景観を見下ろし続けた。それは、高潔なるものが侮蔑するようでもあり、慈悲あるものが哀れむようでもあった。
そして天は、地が、どれほど穢れおよずれようともかわらず澄んでいた。汚されることなくひろがって在った。
 炎の戦場――。
 少年は天を仰いだ。
 心に湧き上がる鈍い痛みと苦悶を押し殺して、涙を流すことも許されず、ただ天を仰いだ。
 いったい、幾年。
 続けてゆけばいいのだ。
 ――天よ。
 少年は、問う。
 ――天よ。……天に坐します我らが帝――。
 少年が、高天原の神殿で、天の帝  天照大神から下された命を刻んだ、あの日の記憶を残して、歴史の憶い出は褪せてゆく。枯れて逝く。
「豊葦原の千五百秋の瑞穂の国は、是れ吾が子孫の王たるべき地なり。宜しく爾皇孫、就きて治せ」
 それが、太陽の女神が告げた言霊。
 出雲神族が、大国主と、天照の弟・須佐鳴のもと反旗を翻したのだった。豊葦原を蹂躙した戦火。悲鳴。怒号。剣戟。
 いま――血の雨が染め上げたような、緋色の天空が、少年の頭上に広がっている。