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きまいら2012
きまいら2012
novelistID. 4753
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あなぐらさま

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・・・生家の裏手はすぐ森になっていて、家から少し離れたところに森の奥へ続く小道がありました。
小さい頃は「森んなかに勝手に入りなさんなえ!」とよくばあちゃんに念押しされたものです。
小学校高学年にもなると「うっせぇばばあ」と恩知らずにも程がある返事をしてお構いなしに仲間達と連れ立って森に入って行きました。記憶の中での森は広く、鬱然としていたものですが、大人になった今、オンライン上の衛星画像なんかで見るとこんなに小さかったんだと感慨深くなる程、当時の自分は深く、薄暗く感じていました。

ばあちゃんは事あるごとに念押ししました。「森んなかに絶対入りなさんなえ!」
6年生の夏、ばあちゃんの語気が俄かに変わったのを、今も忘れていません。
12歳になる手前くらいだったろうか。当時も地元ではかなり騒がれたし、全国ニュースにもなったから大学に入ってあまりにも暇過ぎな時に、ふと当時のことが気になったので調べた見ました。ぬっぽん軽罪新聞の縮刷版で当時の記事を要約するとこんな感じです。

仏歴2707年8月13日、大罪県速看取群再生町皮洗餌夏(たいざいけん はやみとりぐん さいせいちょう かわあらい えげ)地区の雑木林にある洞穴で3人の男女が変死しているのが見つかった。3人ともに激しい着衣の乱れがあるものの、死因はいずれも餓死と見られる。問題の洞穴は該当地区では古くから信仰の対象とされている「あなぐら様」を祀る祠として特定資格のある修験者でない限り一般には立ち入ってはならないとされている。3人の遺体からは薬物反応があり、パーフェクト・ヒューリーと呼ばれる気化性薬物ならびにソーマ・ドライブと呼ばれる非合法酒類を摂取していた疑い。うち一人(女性)はご神体である「あなぐらさま」を抱きかかえながら死亡していた。九州道各地で相次ぐ千切り雛などの事件との関連も指摘されることから県警では引き続き厳密な捜査を行う方針。

要約すると、というか面倒なんでそのまま抜気ぺディアから(都合良く縮刷版の要約があった)貼り付けただけになりましたが、要するにこういうことっス。おわかり頂けるだろうか。自分で調べながら、うわあまじびびりました。千切り雛との関連って、、挽いた人肉でもあったんでしょうか(汗)




           /´    ヽ       /、   ヽ
           | /    |     /  /    |
       .    |     .|_lヽlヽ, | ,/ .  |   K、Ka、神ヨオオ・・・
           |      |  ´Д`ヽ/ ノ    ,|      ウルワシキ神よォオオをををを
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           ノヽ`   ノヽ      `   /         芳醇なレスををををを
          /   ,/ソ         \ /
         (       ,/    `´   |
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 と、いうわけで多少正気に戻りますが、改めて振り返ると地元でこんな事件おこっちょったんですね!びっくり始末た。当時を懐かしんでこの夏休みには地元の不愉快な仲間達と一緒に問題の森を攻めにいく予定です!コアなレポートする予定なのでこうご期待(笑)何もかもなつかしーーとかいってる場合じゃねぇし、夏。

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鬱々とした夏の気だるさは仄暗い森の苔むした部分に宿りやすい。子供の手のひらくらいの大きな蛾が、そうした苔類の滲ませる水気に溶けてくたくたと果てている。てらてらと差し込む木漏れ日はぼんやりした午後の風に紛れながら、既に果てた蛾の命を慰撫していた。やがてどこからか枯れ枝を踏みしだきながら馴れない足取りで森を進む2人連れが現れた。この二人は全くの好奇心からこの森に足を踏み入れたのだった。4年前、地元で起きた怪異の現場を、ただ見たいがために。二人とも軽装で、カジュアルな服装であった。特別な装備といえば、懐中電灯とスポーツドリンク程度のものだった。

「結構くらいねー」と深い草色の綿パンを穿いた少年は軽く弾むような調子でもう一人に話しかけた。違和雲魔詩撫という名の少年はこういう冒険的な遊びが大好きだった。一方もう一人の少年も魔詩撫と同じくらいかあるいはそれ以上に危なっかしいことが大好きだった。名を裏永陵勢といった。魔詩撫のかけて来た声の軽い調子に合わせて、彼は即興で韻を踏みながら駄洒落を織り交ぜたリズムを取ったかと思うと性急に自分でオチをつけて自己完結するという離れ業を披露した。傍から見ていると鳥肌が立つほどくだらない芸なのだが、それがいつものことである魔詩撫にとっては半ば笑いとして中毒的であり、また和みを感じる一情景であった。

間の抜けた調子で「死体あるかなあ」と陵勢が呟いた。
「ないでしょー、さすがに。この前捜索隊入ったばっかじゃん、あの洞窟」
魔詩撫はつい先々週くらいのローカルニュースを思い出していた。
4年前の変死事件があってからは県警が定期的に捜索隊を組んで、有資格修験者の指導の下に査察が入るようになったのだ。
2人がゆるゆると森の奥へ奥へ入っていく。午後五時を告げる役場の時報が流れてくる。ドボルザークの「新世界」のうち特に「家路」と呼ばれる部分が再生町町役場が決めた黄昏時の時報である。
魔詩撫も陵勢も幼い頃から聞き慣らされてきた馴染み深い曲であった。
「この曲の怖い話、知ってる?」
「前も聞いた!聞いたよ!」
作品名:あなぐらさま 作家名:きまいら2012