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「ネザーランドドワーフ」

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手のテスト1


なんか手が進まないので、短編でも書いてみるか………

ルールA 文字制限なし
ルールB オチなくても書き終える
ルールC 一瞬で書けない場合は諦める
ルールD トイレタイムなし

…★…★…★…


【タイトル ネザーランドドワーフ】
 私は朝とても早くに起きて、夜も結構早いうちに寝ます。
 でも殆ど一日中なにも喋りません。喋るのが上手くないのでなにも喋りません。
 私はとても臆病で、実はあまり人と接するのは好きではないのです、だからいつも静かにしています。本当は暗いところの方が好きです。
 だけどたった一人、私にもたった一人好きな人がいます。彼女は今年で二十五になりました。親とは最近離れて暮らすようになりました。そして今は私と一緒に暮らしています。
 小枝ちゃん。彼女は小枝ちゃんと云いました。小枝ちゃんはとても可愛らしいです。いつも帰ってくるなりすぐに私に話しかけてくれるのです。眠たくてウトウトしている時にまで話しかけてくるのは少し大変ですけど、小枝ちゃんのためならと我慢します。大好きなお昼寝の時間よりも、私は小枝ちゃんが好きなのです。
 小枝ちゃんが帰ってくると、なるべく小さな音でドアの開け閉めが行われます。煩いのが嫌いな私は彼女のそんな心遣いがすごく嬉しいです。私は喋るのが苦手なので、小枝ちゃんにほとんど口を利きませんが、小枝ちゃんの愛情は判っています。
 私は小枝ちゃんが好きです。同姓です、ですが子供が欲しいくらい好きです。この愛が伝わらない愛だとしても、私は小枝ちゃんを愛しています。小枝ちゃんが私を愛しているかどうかは判りませんが、判らないなら、判らないで良いです。
 私は弱いです、小枝ちゃんが私の思いを判ってくれてないと判ってしまえば、私はきっと自ら命を絶つほどに傷つくでしょう。
 それならば、私は今のままで良いのです。
 ……後悔はもちろんあります。でも、小枝ちゃんは私を気に入ってくれたから此処に置いてくれたって、私はちゃんと判っています。小枝ちゃんは、私を嫌っている訳ではないと判っています。友情と愛情には、そう大差はないでしょう。どうせ私が愛を云っても、小枝ちゃんの耳には聞こえないのです。小枝ちゃんのこころには伝わらないのです。私は小枝ちゃんが大好きです。小枝ちゃんは私を気に入ってくれているので私を此処に置いてくれています。それで良いじゃないですか。
 私は幸せでした。いつも幸せそうにニッコリ笑っている小枝ちゃん。可愛い小枝ちゃん。私の憧れの小枝ちゃん。私は小枝ちゃんが本当に大好きです。

 しかしある日、そんな愛する小枝ちゃんが云うのです。
「ねぇ、ミミ……ごめんね、もしかしたら近いうちに会えなくなるかもしれないんだ」
 私は意味が判らなくて首を傾げました。だけど小枝ちゃんはニッコリ笑って私の頭を撫でるだけでした。とても気持ち良いはずの小枝ちゃんの掌の温かさは、その日に限ってとても冷たかったです。
 私は心の奥底から動揺しました。そしてまず、自分を責めました。私が、私が悪い子だから小枝ちゃんがもう会ってくれなくなってしまう! 小枝ちゃんが会ってくれなくなるのは自分の所為だと思い込みました。
 だけど、何日かして気付きました――小枝ちゃんは、身体が良くありませんでした。
 家のテーブルの上には袋が置いてありましたが、私がそれをまじまじと見ていると、小枝ちゃんは「これは、おくすりだよ」と教えてくれました。そして「これでからだのわるいところをなおすんだよ」とも教えてくれました。しかし、それを呑んでも小枝ちゃんの手は冷たいままで、小枝ちゃんの身体は間違いなく悪いのだと、私は確信しました。
 私がまだ小さかった頃、私のお母さんが亡くなった時、小枝ちゃんのように冷たくなったのを覚えています。それと同じことなのでしょう。小枝ちゃんは、死ぬのでしょうか、私は小枝ちゃんのことしか考えられなくなりました。
 私は、小枝ちゃんに精一杯元気を振る舞いました。小枝ちゃんに死なないで欲しいと訴えかけました。小枝ちゃんに良くなって欲しいと心配しました。本当に、本当に愛していたので、小枝ちゃんが死ぬことだけは絶対に許せませんでした。
 小枝ちゃんは、判ってくれているのか判ってくれていないのか、いつもの笑顔でご飯をつくってくれました。ご飯をくれる手を触って、やはり冷たいと思い、悲しく思いました。
 どうしたら小枝ちゃんを助けられるかを考えてみても、小枝ちゃんを助ける術は見つかりませんでした。
 小枝ちゃんは、段々元気がなくなっていきました。
 私には必ず元気に振舞ってくれるのですけど、咳をしています、手もやはり冷たいのです。時々、痛がり、何かを吐き出すような声も聞こえました。
 小枝ちゃんがどうなっているか判らなくて、私は自分の部屋を揺らして小枝ちゃんを呼びますが、小枝ちゃんは私の部屋に近づく頃にはまた元の元気な顔を無理矢理つくって私の前に姿を現してくれるのです。
 ちがうよ小枝ちゃん……私は小枝ちゃんの無理をしてる顔を見たい訳じゃないんだ。もっと、私の知らない小枝ちゃんの表情を見せて欲しいのに……。
 だけど私の声は小枝ちゃんには伝わりません。

 小枝ちゃんの症状はますます悪くなりました。小枝ちゃんの知り合いが何人も家に来ました。小枝ちゃんのお母さんお父さんも来ました。
 小枝ちゃんはそこでもいつもの笑顔を振りまいていました。本当に小枝ちゃんは、良い子でした。
 その日は小枝ちゃんがとても美味しそうなご飯をくれました。私は冷たい手からそれを食べました。

 次の日になって、小枝ちゃんは倒れてしまいました。
「あれ……おかしいな」
「あはは、ミミ、立てないや」
「おかしーなー……友達に云って助けてもらいたいけど、電話までたどり着けないなぁ……」
 小枝ちゃんはいつものように笑って云っていました。
 やがて、なにかを諦めたかのようにクスクス笑って、私を見ました
「ねぇ、ミミ……私、もうだめみたい」
「ごめんね……此処開けておくから……」
 小枝ちゃんは私の部屋の鍵を開けてくれました。そして、眠りについてしまいました。
 いくら私の悪い頭でもなにが起こっているか判りました。小枝ちゃんは、死んでしまいました。

 私は、抜け殻のようになった小枝ちゃんに、部屋のドアを開いて近づきました。
 ですが小枝ちゃんは冷たくなっていました。小枝ちゃんが死んでしまった以上、私はもう、小枝ちゃんからなにも得ることは出来ません。
 私は悲しくなりました。そして、自分の部屋に戻りました。小枝ちゃんはいつも静かにしている私を褒めてくれました。小枝ちゃんの褒めてくれることをすれば、小枝ちゃんが戻ってくれるような気がしました。
 二日たちました。
 三日たちました。
 一週間たちました。
 日にちが判らなくなりました。

 私は小枝ちゃんの云いつけ通り、自分の部屋で待っていました。お腹が空きました。もう我慢の限界です。
 私は自分の身体が冷たくなっていることに気がつきました。ですが、それでも良いと思いました。小枝ちゃんの目の前でなら、死んだって良いと思いました。