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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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綿津見國奇譚

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 やがて、広場に特別にしつらえられた祭壇の前に、クサナギとユズリハが現れると大きな歓声が上がった。ホデリ族の伝統的な正装に身を包んだ二人の美しさ、あでやかさは、見るものの目を釘付けにせずにはいなかった。
 その上、ホムラの手による太陽と月を意匠した冠や首飾りなどの金銀の装飾品は、みごとな細工にだれもが感嘆の声をあげた。それは二人の美しさをより引き立てていた。
 族長ムラクモから祝いの言葉を受け、祭壇へと昇っていく二人の姿を、頬を紅潮させて見ていたサクヤとシタダミの耳にささやく声が聞こえた。
『次はあなたたちの番よ……』
「母さん!」
「シノノメの声よね。シタダミ、聞こえた?」
 二人はそっと手をつないで、クサナギとユズリハの幸せな姿をみつめるのだった。
 祭壇上で、真っ白な長衣に緋色の上着を羽織った法衣姿の大神官マツリカが、二人の結婚を天へ報告する儀式を執り行なった。マツリカの手には、あのクブツチの太刀があり、天に高く差し出した太刀の刃は、日の光にまばゆく輝いていた。
 その光の中から白い鳥が現れ、青い空に舞いながら、やがて消えていくのを見た時、その場に集う者たちは、天の祝福だと大きな喜びにわくのだった。
(カササギ、来てくれたんだね)
 ニシキギも、ほかの勇者たちもそう思わずにはいられなかった。
 滞りなく結婚の儀式がすべて終わったのち、王も列席しての宴が開かれた。ヒムカはあらためて心から二人を祝福した。
「おめでとう。クサナギ、ユズリハ」
 にぎやかな宴はいつまでも続き、歌声や笑い声は青い空にこだましていった。



作品名:綿津見國奇譚 作家名:せき あゆみ