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Apex of Sky Act.1~天空をみつめて~

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act1
白いバイクの後ろに乗り、学校の外周に現れた時には随分注目されたものだ。
しかしそのおかげで生徒指導部行きの違反切符はなしですんだ。
「お前っ、どうやって有希先輩をおとしたんだよっ!?」とは教室に到着したとき真っ先にかけられた言葉だ。無論否定するもしばらくの間納得してもらえなかったのは言うまでもない。
どうやら彼女は学校では有名な生徒らしく、やはり2年生の先輩だった。名前もクロード 有希とやっぱり異国混ざりの洒落た名前だった。有名な理由はそれだけではなく、バイクが白いことからか、ユニコーンの騎士という異名で呼ばれているときいた。どこの中二病かと思っていたが、剣術部に所属していて、1年生の時からキャプテンをするほどの腕前を持ち合わせているらしい。
(だからユニコーンの騎士か…)
剣術部とは、最近開発されたスポーツで、フェンシングと剣道の掛け合わせみたいなもの。と素人の僕は認識している。
有希さんか…お礼をしないとな…。
「なぁに浮かれちゃってるのよ。」
「うわぁっ、びっくりした…。」頬杖をつき、窓の外を眺めている時急にかけられた声に驚き、僕は振り向いた。恐らくはとんでもなく不格好だっただろう…。
目の前にいたのは、幼なじみであり、姉貴分的存在の、香川 佳奈 だった。
しかし、少し驚いた。なぜなら、今まで変えたことがなかったうす紫のロングヘアをツインテールにまとめてきている。どうしたのだろうか。
「今日は髪型違うんだね。どうしたの?」恐らく怒られるのではと恐る恐る訊いてみる。毎回何かあるごとに訊くと激しく怒られるため、警戒する。
「別にどうってことはないわよ…、ただの気分転換よ。判ってるでしょうけど、気にして欲しかった訳じゃないんだからねっ!」少し早口に、慌てて佳奈は否定した。
やっぱり怒られるな…。機嫌を戻さなくては。
「似合ってるよ。可愛いとおもう。うん。」
「ば、ばかっ、そんな事言っても何にもでないわよ…」
ダメか…。
「比奈に言われてやってみたのよ。ほめるなら比奈をほめてあげなさいよ。」気を取り直すように佳奈は言い、腰に手を当てたお姉様モードでそう言った。
比奈、と言えば、佳奈の双子の妹で、同じく幼なじみだった。比奈の方は佳奈とは逆で、どちらかというと人に謝ってばかりいた。佳奈をよく慕っており、僕と同じように佳奈を姉のように見ていた。
この2人は幼なじみとはいえ、親の仕事の関係で中学校は別だったために高校生になってから再会し、お互いの変わりなさを笑いあったものだ。
そんな取り留めのない会話をしていると、HRの予鈴である鐘の音を模した電子音が鳴り響いた。

  午前の授業も終え、眠気もたけなわ僕はいつものように学食へとあしをはこんだ。昼食を求めて既に集まって来ていた生徒達の熱気と喧騒に気が遠くなる。昼食にありつけるのか…?中には授業を抜け出して先に来る強者もいるらしい…。
「あ、いた。せいちゃん、こっち~っ」聞き覚えのある声が背後から僕を呼ぶ。
僕の名前は 長月 誠吾 だが、雰囲気に合わないとよくいわれ、いつしかせいちゃんと呼ばれるようになった。
振り返るとそこには香川 比奈がいた。姉の佳奈の隣、ちょこちょこと跳ねながら手招きをしている。誘われるまま二人のもとにたどり着くと、佳奈にパンの袋を突きつけられた。
「あんた要領悪いんだから、あたしがあんたの分買っておいてあげたわよ。」あからさまに目を逸らしながら僕の胸にパンを押しつけてくる佳奈は、照れているようにも見えた。
「お姉ちゃん授業中だったのに走って行ってたもんね…。」
「ばっ、ばかっ、違うわよっ、トイレよ、トイレっ。」
「でもお姉ちゃん帰ってくる時ちゃんとパンの袋3つもってたよ…。」
強者だった…。

人波掻き分け場所を変え、ここは中庭。僕は幼なじみ二人に囲まれ、昼食をとっていた。
さすが中庭ともあって、回りにはカップルで食事をしている者も多く、この三人も回りから見ればカップルと付き添いにも見えるのだろうか。
「何よ、そわそわしちゃって。トイレにでも行きたいの?」見回しているのに気付いたのか、佳奈はそう言った。
「そうじゃないよ。」
「じゃあ、どうしたのよ。落ち着きないわね。」
付き合うとしたらどちらかなんという下心を見破られたら最後、佳奈に吹き飛ばされるのは目に見えている…。どうにかしなければ。僕は適当な言い訳を考える。
「いや、二人とも可愛いなと思って。」言い訳でもあるが、正直な感想だ。
「っ!!」
「ふぇっ!?」
二人ともほぼ同時に反応する。
おぉ、反応も可愛いな。これも中々面白いと思う。
「何を言い出すかと思ったらあんたはっ!」顔を真っ赤にしながら立ち上がる佳奈。うぁ、逆効果だったっ!そんなに怒らなくても…。
「お、お姉ちゃん落ち着いてっ、せいちゃん褒めてくれたんだし…。」今にもこちらに詰め寄って来そうな佳奈を比奈は袖を引っ張って止める。
「い、いきなりそんな事を言うなんて、失礼よっ、男として失格っ!!」うぁ…ひどい…、そこまで言わなくてもorz
「お姉ちゃんそれは言い過ぎだよ…。確かにびっくりしたけど…。」比奈は佳奈を止めつつなだめてくれていた。比奈ちゃ~ん…。
気が付くと回りの視線は全て僕らに向いており、中庭ばかりか校舎内からも様子を窺う者もいた。それもそのはず、佳奈は辺り中に響くような声で迫ってきたのだから…。
「お前ら、もう付き合っちゃったら?」どこかの野次馬からか飛んだ野次。
ぇ…。
「いっ、今言った奴どこよ!?制裁が欲しいのねわかります」どこかの野次馬からか飛んだ野次に対し弾圧?制圧に向かう佳奈。
冗談であって欲しいと僕は心から思った…。

1日の授業が終わり、HRの時間になる。
僕のクラスは、担任になる予定だった教員が、急用で暫く来られないということで、代用の教員が担当しているのだった。
本来の担任教師がどんな人物かは良く知らないが、とにかく美人の若い女教師ときいている。ただし変わり者であるともきいていた…。
「よし、お前ら、席付け。大事な話がある。」代用担任教師が教室に入り、教卓に付くと言った。何だろうか。
本来の担任教師のことから興味は「大事な話」へと移り、その人物がどんな変わり方をしているかなんということは考える間もなく打ち切られたのだった。
「お前ら、俺が借担任ってことは覚えてるだろうな。」ざわめく教室の中、代用担任教師は話をすすめる。
丁度気にしている話題だ…。
「実は今日で俺の担任は最後だ。明日からはこの先生に担任をしてもらう。」さぞ残念そうに代用担任教師はいい、廊下に向かって入って下さいと一言声をかけた。
ざわめきが遠のく。いや、遠のいたのではない。静まり返ったのだ。
僕を含め、誰もが息をのむ。
灰色の透き通った瞳。凛とした顔立ちは意志が強そうで、美しく、また可憐だった。髪は、烏の濡れ羽色と言うのだろう、長く伸ばし後ろで結んである。
美人としか言いようがなかった。
しかし、静まり返った大きな理由は美貌だけではなかった。