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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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くれなずむ<世知辛いんです>

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学校の帰り道、椎駄はふと思いついて、
義姉であるクレナに訪ねてみた。
「大人のクユリーってさ、なでられるの嫌がるよね」
 それを聞いたクレナは、肩をすくめて、
呆れ顔で言った。
「そりゃそうでしょ。君は同い年の少年やおじさんの
頭皮をなでる趣味でもあるのかね?」

 頭を撫でられて、ゴロゴロする野郎と親父の画を
思い浮かべて椎駄はげんなりした。
「いや、ないなぁ。ていうか、怖ッ」
「それにまず、人の頭を不躾に撫でるなんて、
そもそも失礼でしょう」
「まぁ、たしかに。」
椎駄は、「人間と同じなんだな」と続けて、
納得したようだった。

 「けどさ、姉さん小さい頃は撫でてと言わんばかりに
じゃれてきてたじゃない」
「まぁ、子供だったしねー。甘えたいさかりだったのさ」
 幼い頃は、喉をゴロゴロと鳴らして、擦り寄って
じゃれて来る様はとても可愛かったものだ。
あの頃の愛らしい印象が強いせいで、椎駄としては
今のクレナの変わり様には抵抗を感じていた。
 
 『今では、撫でてもいい?』と聞くと、
『我を撫でたいと申すか。ふん、特別に赦す。
よかろう、撫でるが良い』
と言った感じで、ふんぞり返って、
実に尊大な態度をとってくる始末。
 不躾に撫でようものなら、パシリと手を
払いのけてくるほどである。
今では、扱いには気を使うほど、
気難しく気位が高くなっていた。
(基本的に性格が、ネコなんだよなぁ~クユリーって。
あ…ネコだったか)

 「クユリーは、誇り高い生き物。食べるためだからと、
媚を売って、へつらうようなマネはしないのです。
愛らしさを振りまいて餌にありつこうとする、
動物や畜生とおんなじに見てもらっては困るね」
 『もっひゅん』と、鼻息を荒く飛ばして言うクレナ。
椎駄は、どう答えていいか迷って適当に、
「へぇ、そうなんだ~」と相槌を打った。

 「あ!クユリーだぁ~」
そう言って、向かいから小学生とおぼしき子供たちの一団が、
クレナを見て駆け寄ってきた。
子供たちは、あっという間にクレナの周りを取り囲み、
わいのわいのとはしゃぎだした。
 「うわぁ、まじでクユリーだー」
「すげぇ、はじめて見た」
「なにいってんの、俺その前、三区の方で見たぜ」
「マジでー、ヨウ君。マジでレアっしょ、それー」
「お姉ちゃんすげぇ、毛並みキレイー」
と、口早に言葉を並び立て、うれしそうに騒ぐ子供たち。

 で、危惧していた一言が飛び出した。
「ねぇ、撫でてもいい?」
子供たちは目を、キラキラと好奇心と
期待で輝かせていた。
 その目を見て、クレナは一瞬、迷って、
たじろいだ様子を見せた。
子供たちの、屈託の無い純真な眼差し。
この圧力に、抗うことができるものがいようか、
いやいない。 
 しかし、クユリーは誇り高い生き物。
子供と言えど、ここは毅然とした態度で断るに――

 「え?うん、い…いいよ?」
違わなかった。
 
 次の瞬間、子供たちは、クレナにわっと飛びかかった。
「きゃぁ!」←クレナの悲鳴
「うわぁ、すげぇやわらけぇー」
「おぉ、肌、すべすべー。気持ちイイー」
「おーよしよし、いい子だねー」
「ここか?ここが、ええんのんかー!?んんー?」
 
 頭を撫でられ、顎の下をくすぐられている様は、
その…なんというか、まんま、ネコであった。
 そんな風にされて、クレナはゴロゴロと喉を鳴らしている。
しまいには、仰向けになって、お腹まで撫で撫でされていた。
 (誇り…高い、生き物、ねぇ…?)
そんなクレナの醜態(?)を椎駄は、哀愁ただよう表情で
ただ見つめていた。

(これ、人間に置き換えたら、
相当やばい画なんじゃないか…?)
『きゃぁ!』←クレナの悲鳴
(半泣きで、嫌悪感いっぱいに)
『うわぁ、すげぇやわらけぇー』
(バスト的な意味で)
『おぉ、肌、すべすべー。気持ちイイー』
(アレをアレでアレされて)
『おーよしよし、いい子だねー』
(なすがままにされて、悦楽の虜に…!)
『ここか?ここがええんのんかー!?んんー?』
(あ、そこは、そこは…。アーッ!)
…。
アホか、自分。

 「ほら、飴だよー。おいしいよー」
「駄菓子食べるー?」
「わふー。ありがとん~」
「お手してくれたら、いいよー」
「!?」
ててん!
 
 クレナの顔が一瞬、険しくなった。
(お?さすがに、これは文句をいうか?)
 クユリーは、誇り高い生き物。
食べるためだからと言って、
媚びへつらったりはしないのだ。
 お手だなんて、こんな人を舐めきった
態度と物言いにはさすがに抗議するだろうと、
椎駄は思った。
クレナは、バツの悪そうな表情を
ちらりとこちらに向け――

 次の瞬間、クレナはあっさりとお手をした。
(えぇーー!?)
きっちりと、おかわりまで。
 男の子にお菓子を貰い、うれしそうに
もちゅもちゅと口にほおばるクレナ。
(餌付けされてる・・・!)
もう完全に、犬猫扱いであった。

「あ、やべぇ。もう、こんな時間か」
「え?チー君、帰るの」
「んじゃ、俺も帰るわー」
「俺もー」
「じゃーねー。クユリーのお姉ちゃん」
「ばふー。気をつけて帰るんだよー」
『はーい』

 子供達が去ったあと、二人の間で
気まずい空気が流れた。
「姉さん…」
「ま…まぁ、子供だしね。年上として、寛大な態度で
接してあげなきゃさ、ねぇ?」
「あんな、お菓子まで貰って・・・うれしそうに。
それにお手って…おかわりまで」

「ちょー、ちが!ああしたほうが、
喜んでくれると思っただけだよ。
サービスだよ、サービス!
見た?子供たちのあの顔、すごく嬉しそうにしてたじゃない。
子供のあるべきクユリー象の期待を裏切るなんて、
私にはできなかったんだよ!」

「その割には、ノリノリだったじゃん。
お菓子も、すごくおいしそうに食べてたけど?」

「いや、それは…。い…いいじゃん、
美味しい物を美味しそうに食べたってさ」

「媚を売って、へつらわないんじゃ、なかったっけー?」

「うぅ…」

「言うほどじゃないんだね、クユリーのプライドって。
やっぱり、しょせん根っこは犬猫といっしょ…」

「むがぁーー!」 
怒声を発し、クレナが突如キレた。
まさにそれは、野生の咆哮であった。

「うっさいわ、ボケー!野生のな、
野生の厳しさを知らん人間が
偉そうに講釈たれんな、ボケェェーーー!
自然はな、厳しいんだぞう!!
食事にありつけない怖さを知らんから、
そんなことがいえるんじゃぁーー!
食うためには、プライドだってかなぐり捨てなきゃ、
あかんのじゃぃーーー!!」

「自然って、アンタ…。思いっきり、
人間の文明社会で暮らしてるじゃん」

「だらっしゃーーい!野生の直感が、
そう訴えておるんじゃぁーー!
人間社会で暮らしている連中より、
野で暮らしているクユリーのほうが
多いんじゃぁーーー!
ホントに小さい頃ころは、私も野で暮らしてたのッ!
いいよね、ほんと。当たり前に、
飯が食える環境で暮らせてさ!
三角コーナーに、ぽいっと余り物捨ててる日本人には、
食べれる有難みが
わからないんだよッ!
いっそ、裸一貫で、アフリカいってこい!
そして、食べれることの有り難さを