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陰陽戦記TAKERU 前編

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 俺の家では映画上映会が開かれていた。
 それはこの前借りてきたアニメのDVDで、今美和さんがどっぷりとはまっている子供向けのアニメ『ノラえもん・ろび太と深海鬼岩城』の映画だった。
 そういやアニメも観なくなったな、加奈葉と弥生はまだ見てるらしいけど…… 
「ううっ……」
 美和さんと加奈葉はすっかりブラウン管に釘付けになってしまっていた。
 そしてハンカチを片手に涙を流していた。
「か、かわいそうです……」
「バゴーちゃんが……」
 ちなみにバゴーちゃんと言うのはノラえもんが四次元ポーチから出した人語を喋る車で、ラストで敵のボスと自爆すると言う場面をもう何度も見ている、
 少なくとも30回以上は見ているだろうがもう面倒になったので数えるのを止めた。
「そう言えばさ…… 聖獣ってどうなったの?」
 あれからかなり経つ、そろそろ聖獣達も回復してもいい頃だろうと思う、
 まぁ、俺のは感だからこう言うのは専門家である美和さんに聞いた方がいい、
「えっ?」
「いやさ、そろそろ探さないかな〜ってさ……」
 数秒の沈黙が流れる、
「あああ―――っ!」
 すると美和さんは今まで聞いた事が無い大声を上げた。
 美和さんもすっかり忘れていたようで顔を抑えながらガタガタと震え出した。
「そ、そうでした…… 私は今まで何を……」
 平和ボケって怖ぇな……
「武様、今すぐ聖獣を探しましょう!」
「えっ、いやでも…… 今夜だしさ、鬼もウジャウジャいる事だし……」
「多少の鬼が何ですか、私の世界では夜歩けば鬼どころか魑魅魍魎や悪霊が人を襲い貪っていました!」
 怖い事を平気でいうなぁ…… 余計なスイッチ入れちまったと俺も後悔をしていると加奈葉が助け舟を出してくれた。
「美和さん、その聖獣の気配って分からないの?」
「えっ?」
「いや、ほら鬼の気配が分かるんだから聖獣の気配も分かるんじゃ無いの?」
「そ、そうでした。私とした事が……」
 美和さんは顔を赤くして畳に両手をついた。
「とにかく気配を探ってみたら? それからでも遅くないんじゃない?」
「分かりました。」
 美和さんは目を閉じて精神を統一する、
 俺は邪魔にならないようにテレビを消す、この部屋一面を重苦しい空気が支配すると俺と加奈葉も唾を飲んだ。
「……北!」
 美和さんは目を見開いた。
 俺は地図を用意する。
「方角は分かったけど、どのくらいあるのかしら?」
 確かに問題はその距離だ。
 まさか北海道って言うんじゃないだろうな……
「意外と近くです、恐らくこの町かと……」
「よかった。じゃあ明日調べようぜ!」
 明日は週末で学校が休み、
 俺も美和さんもバイトが無いしフルに時間が使える、って事は……
「ちょっと武」
「ん?」
 加奈葉が俺に顔を近付ける。
「何か勘違いしてるみたいだけど、デートじゃないのよ、分かってる?」
「な、何言ってんだ、そそそ、そんな訳無いだろ……」
 俺は目を泳がせながら声が裏返った。
 こいつ昔っから鋭いんだよな、はっきり言って図星だったぜ……
「私もいくからね!」
 加奈葉は俺の胸倉をつかむとそう言った。
 とにかく全ては明日、俺達は捜索を開始する事にした。