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陰陽戦記TAKERU 前編

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第二話 1人ぼっちの陰陽師

 
 俺達はとりあえず診療所に戻ってくる、
 割れたガラスを片付けて補強し終えると客間に上がる、俺達は何故か正座をさせられていた。
 そしてちゃぶ台を挟んだ反対側には加奈葉がいる。しかもかなりご機嫌斜めだった。
「か、加奈葉さん…… あのですね……」
 俺は何故か敬語だった。
 すると加奈葉の首がまるで音声で動く人形のように動いてこちらを睨みつけた。
「何よ?」
 幼馴染だけに…… いや、そうで無くとも分かる、こいつはかなり怒っていた。
 こうなると神様にさえ八つ当たりをするような奴なのである。
「それはそうと……」
 加奈葉は例の女の子を見る、
 彼女の方は加奈葉をキョトンと見つめている。
「納得行く説明をしてもらうわよ、アナタはどこの誰でその光って空飛ぶ刀は何っ?」
 すると女の子は太刀を見る、
 今は光りもしないし空も飛ばない、彼女は小さな口を開く、
「その前に…… こちらから一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ちょっと、聞いてるのはこっちよ!」
「待て加奈葉、ええと……」
 そう言えば名前を聞いていなかった。
 とりあえずは自己紹介からだな、俺は自分の名前を言う、するとそれに反応するように彼女は自分の名前を口にした。
「私は美和、京の都で陰陽師をしております」
「京の都……」
「陰陽師ぃ?」
 陰陽師ってあれだろ? よく漫画に出てくる魔法使いみたいな奴、鬼と戦ったり式神とか言う奴を出したりする、
 よく分からないけどまぁ着てた服は確かに見た事がある、漫画でだけどな……
「アナタねぇ……」
 加奈葉は頭を抑えて肩の力が抜けた、
「あの、今度は私からよろしいでしょうか?」
「えっ、ああ……」
「ここはどこでしょうか?」
「はいぃ?」
 俺達は固まった。
 ここは日本の星明町、そこの診療所だ。
「はぁ、この和の国にそんな場所が……」
 和の国って…… おいおい何言ってんだ?
「あ、あのさ、美和さん…… だっけ? 美和さん今までどこにいたの? 詳しく話してくれないか?」
 俺は訪ねた。
 すると彼女がいた場所は延喜5年の京の都だと言う、
「ちょっと待って、延期5年? それって確か平安時代よ。」
 俺と加奈葉の考えている事はどうやら一緒らしい、
 美和さんの言葉を信じるなら彼女は1000年以上前からタイムスリップして来た過去の人間と言う事になる。
「ちょっとアナタ、いい加減にしなさいよ」
「えっ? 私何かおかしな事をいいました?」
 美和さんの瞳には全く迷いなど無かった。
 とてもではないが嘘を言っているようには見えなかった。
 加奈葉は反論する事さえ疲れたのだろう、両肩を落とした。
「まぁ、信じられない話じゃ無いかもな」
 俺は言う、彼女は空から降って来た。
 とても信じられない話だが加奈葉は突然光って飛んだ刀の事は知っていた。
 だけど光の壁は見えなかったらしい、側にいたのにも関わらずだ。
「んじゃあ仮にその話が本当だとして、その刀が飛んだのは何?」
「これですか? これは『鬼斬り丸』です」
 美和さんは太刀をちゃぶ台の上に置く、
「この太刀はその名の通り鬼を倒す為に作られた物です」
「そうそう、あの化け物を真っ二つに切り裂いちまったんだよな?」
「化け物?」
 俺は光の壁の中で蜥蜴の化け物と戦った事を全部話した。
 持ってた黄色い玉が輝くと刀が飛んできて鞘から抜いて化け物をぶった斬ったんだ。
「私には抜けなかったわよ」
「これは『法力』を持つ者以外には抜けないし使えないように作られているんです」
「じゃあ俺にはその『法力』ってのがあるって訳だな?」
 美和さんは頷いた。
 早い話がRPGのMPみたいな物だな、
「剣の事は分かったけど、この玉は何だ?」
 次に俺は黄色い玉の事を思い出した、確かこの玉が光った後だよな、この玉の方にも何かあるんじゃないか?
「それは麒麟の宝玉です」
「きりん?」
 それって草食動物で首が長い?
 と言いたいがそれは違った。
「麒麟とは『天』を司り光と雷を司る聖獣の1体です」
「ちょっと待って、1体って事はまだいるの?」
「はい、あと朱雀、玄武、白虎、青龍の四体がいます」
「あ、それ知ってる、ゲームに出てた」
「げぇむ?」
「ああ…… 何つったらいいのか……」
 美和さんに冗談は通じない、
 とりあえず俺が得た知識(ゲーム内)じゃ四神はそれぞれ東西南北にいてそれぞれ水、風、火、土を司ると言われている、
「それぞれ力を宝玉に封じていたのですが、いつの間にかなくなっていました……」
 美和さんは悲しそうな顔になり肩を落とす、
 すると俺はある事を思い出した。
 それは鬼斬り丸と宝玉、そして美和さんが落ちてきた前に飛んで行った4つの光の事だった。
「ご存知なんですか?」
「まぁ、大体飛んで行った方向は、でもどこにあるのかまではちょっと……」
「それでも充分です、武様!」
「武……様ぁ?」
 奇麗な子に『様』?
 何か照れる、ってか恥ずかしいなぁ…… 加奈葉の痛い目線がこちらを見る中、美和さんは正座した状態で大勢を変えて俺と向き合うと深々と頭を下げた。
「お願いがあります、私と一緒に聖獣を探してください!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 何で武がそんな事しなきゃいけないのよ?」
 加奈葉はちゃぶ台を叩いて身を乗り出した。
「百歩譲ってあなたの話を信用するとするわ、でもねぇ、武は無関係なんじゃないの?」
「おい加奈葉……」
「アンタは黙ってなさい!」
 俺は何も言えなくなると美和さんは口を開いた。
「……確かにその通りです、ですが武様の存在は敵に知られているのかも知れないんです」
「敵? でも倒したぜ」
「あれはただの使い魔です、きっとどこかに奴もいるはずです」
「奴?」
 美和さんは話した。
 彼女には敵がいてそれと戦っている最中にこの世界に飛ばされたと言う、
 そしてその敵もこの世界に来てしまったと言うのだ。
 突如都に出没し平和な都を鬼や悪霊の住む闇の魔都に変えてしまった暗黒の化身、
「正体までは分かりませんが、私達は『暗黒天帝』と呼んでいます」 
「それが怪物の親玉って訳か……」
「はい、暗黒天帝に聖獣の宝玉が奪われれば大変な事になります。恐らくこの世界も……」
 美和さんの世界みたいになるって事か、いまいちパッとしないがさっきみたいな化け物がウジャウジャいるのはさすがに気分が悪かった。
 まぁ確かに危ない目に合うのはゴメンだな、
「分かった」
「えっ?」
「俺も探し物を手伝うよ、一人より二人の方が早く見つかるだろ」
「そんな、武!」
「有難うございます武様!」
 美和さんは俺の両手を握り締めて顔を近付けた、俺は思わず顔を引いた。
「ちょっとちょっと待ちなさいよ!」
「別にいいだろ、探し物くらい、お前頭固すぎなんだよ」
「何よ、心配してんじゃない!」
「とにかくだ。明日美和さんが落ちてきた所にいってみようよ、何か他にあるかもしれない」
「はい、武様」
 美和さんは笑顔になった。
 やっぱり可愛いなぁ、