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陰陽戦記TAKERU 前編

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 俺は歯を軋ませ渾身の力で前に進もうとしていた。
 しかし俺はそこから先に進む事が出来なかった。
『クッ』
 暗黒天帝は眉を引くつかせた。
 何と黒いオーラの中から5本の指の手が飛び出して光の刃を受け止めやがった。
『フッ、やはりな…… こんな事だろうと思ったぞ』
「何だと?」
『学から聞いたのだろう? この傷の事をな!』
 すると暗黒天帝の大きく露出した額がザックリ割れた。
 どう言う仕組みで隠してたのか分からないが確かに何かで斬られた跡だった。
『残念だったな、余に同じ手は通用せぬわっ!』
 暗黒天帝の口が開くと怪光線が発射、俺の腹部に当ると俺はその衝撃で一気に地上まで吹っ飛ばされて叩きつけられた。
「武様っ!」
『カッ!』
 暗黒天帝が一喝すると衝撃波が発せられて美和さんを攻撃した。
「きゃああっ!」
 美和さんも飛行能力を失って俺の隣りに落下した。
「美和さんっ!」
「ぐっ……」
 美和さんは動く事すら苦しそうだった。
 俺は鎧だけど美和さんは法力がバリアの役目をして朱雀の力が地面に激突する瞬間にクッション代わりになったんだろうけどやっぱり身体は生身のまま、ダメージは大きかった。
 しかしそれだけで暗黒天帝の攻撃は終わらなかった。
 奴は俺達の側に下り立つと黒い腕を伸ばして俺と美和さんの首を締めつけた。
「ぐあっ?」
「ううっ!」
 俺達は引き摺られて暗黒天帝の側まで寄せられる、
『ハハハ、形勢逆転だな。』
 俺達は暗黒天帝の力を引き離そうとするが相手の力が強すぎる、俺は鬼斬り丸に法力を込めるが刃から光が消えてしまった。
『愚か者め、今の貴様達に法力は使えぬ!』
「ど、どう意味だそりゃ?」
 すると暗黒天帝はニヤリと笑う、よく見ると暗黒天帝の両腕がほのかに輝いて本体に流れて行く。
『余は貴様達から法力を吸収しているのだ。法力の供給を途中で遮断されては聖獣達の力も使えまい!』
 やべぇ、こいつそれを知ってやがったのか?
 すると暗黒天帝はタイムマシンの方を見た。
 マシンは桐生さん達が学の親父さん達を気絶させてシステムを解除しようとしていた。
『そうはさせぬ!』
 すると暗黒天帝が念じると凍らされていた鬼達の氷が砕けて一つに固まって橋を砕いて巨大な鬼と化した。
 姿形は元のままだが大きさが映画の巨大怪獣くらいはあった。
『やれ、タイムマシンを守れっ!』
 暗黒天帝が命じると鬼は桐生さん達に襲い掛かった。
 大きな右手でトラックごとタイムマシンを持ち上げ、左手で桐生さん達を薙ぎ払った。
 桐生さん達も力の出し惜しみをせずにフルパワーで攻撃するが鬼には全く通じなかった。
 やっぱり体格差があるんだろう圧倒的に不利な状況だった。
「テ、テメェ!」
『ハハハッ! 貴様達と奴等、一体どちらが持つかな?』
 すでに勝ち誇ってやがった。忌々しい野郎だ。
「う…… ああ……」
 美和さんの方がより苦しそうだった。
 それを見た暗黒天帝はさらに追い討ちをかけるように残忍な笑みを浮かべた。
『安心しろ娘、貴様は最後に殺してやる。まずは貴様に協力した愚かな者達から葬ってくれるわ!』
「ぐああああっ!」
 すると俺の体に電流みたいな物が走った。さらに腕の力も強くなり腕に入る力も抜けて意識が薄れてゆく、
 その中で美和さんを見ると必死で手を伸ばして俺を助けようとしていたがそれが出来ずに奇麗な瞳から涙が溢れて汚れた頬を伝わった。
「くっ!」
 それを見た瞬間、俺の中で何かがはじけた。
 そして暗黒天帝にも変化が現れた。突然額の傷が輝き始めた。
『ぐっ?』
 突然顔を歪めると苦しみ出した。
『グオオッ? ひ、額が、額がァアアッ?』
 暗黒天帝の黒い腕から力が抜けると俺はそこを狙って暗黒天帝の腕をつかんだ。
『な、何ぃ?』
 俺はこの時何を考えているのか自分でも分からなかった。
 ただこいつを許す事ができない、それだけは分かっていた。
「うおおおおおーーッ!」
 俺の体が熱くなると俺は暗黒天帝の腕を引き千切った。
 途端麒麟の宝玉が輝くと麒麟の鎧が装着された。