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こんにちは、エミィです

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エピローグ



「お嬢さま、こちらでございますぞ!」
「ちょっと待って頂戴、カンカン。私、そんなに早く走れません!」

 あの後、歌い終えた私はカンカンと合流し、あの地図の目的地を目指しています。カンカンに見せると、本当にあっという間。あんなに迷ったのが、嘘みたいです。

「しかし本当にお嬢さまは、道というものに弱いですな。宮殿などでもよく迷子になっていらっしゃいましたし」
「ええ。私の家はとても単純な構造をしていましたからね、このような複雑に入り組んだところは、苦手なのです。だから、カンカンが親切に道案内をして下さらないと、途方に暮れてしまいますわ」
「地図すら読めないとは、このカンカッカカンカーン、存じ上げておりませんでした。大変な思いをさせてしまいましたな」
「失礼ね、地図くらい読めます。方角が分からないだけですわ」
「お嬢さま、まったく弁解になっておりませんぞ!」

 カンカンはこの2日間、あの雨の日に感じとった一瞬の魔力の元を、ずっと探していたと言うのです。
 常に感じるのではなく、その一瞬しかヒントが無かったので、時間がかかったそうですわ。何度も戻ろうと思ったそうですけれど、諦めかけたときに見つけてしまったとかなんとかで……。

「こちらに来る前からコネクションを作っていただなんて、天晴れですわね」
「お褒めに預かり光栄でございます。ま、魔鳥のネットワークを駆使すれば、さしたる問題でもございません」
「でも、すぐに出会えなかったのですね?」
「そ、そうございますな……」
「でも、そのおかげで、この地図を頂くことが出来ましたのね」
「そ、そうでございますぞ、お嬢さま!」

 ファンレターに混じって配達されたこの地図は、カンカンが手配したものなのだそうです。こちらの力ある占い師のかたに、住むところを探しておくよう、頼んでおいたそうですわ。手元に届く前に出発してしまい、連絡が行き違いになったとか。
 カンカンも確かなやり取りではなかったため、私に期待を持たせないように黙っていたみたい。

 そして戻って来るときにあのリンゴを託されたそうですわ。
 そう、あれ、こちらの世界が分かる魔法がかかったリンゴだったのです。

「おお、見えて来ましたぞ、お嬢さま!」

 カンカンが翼を広げ、私を導くようにそちらへと急ぎます。

 とても赴きのある、灰色の建物がこじんまりと建っています。
 門のところには、クリーム色の看板。私はまだ文字は読めないのですけれど、カンカンが言うには、「コーポ藤野」と書かれているそうですわ。

 色々なことがありましたけど、私、戻らずにやって行けそうな気がしています。

 いっくんや未逆さま、アキさんにも、改めて挨拶に行かなくてはなりません。そのためにも地図を読めるようになって、文字を勉強しなくては。全て一人でやれるようになれなくても、この世界に来たのですもの、あちらでは出来なかったことを楽しみたいですわ。

 クリーム色のドアを開きました。
 とっても狭い部屋。
 つんとした、こもったにおいに顔をしかめます。

 駆け込んで、窓を開くと、爽やかな風が入って来ます。

 憧れのこの世界は、思ったよりも美しくないようですけれど、それは些細なことですわ。私は、自由で豊かで、自分の足でどこへでも行けて、様々な人と知り合えるこの世界が好きです。


「明日、地図を買って来ましょう」
「地図? そんな高価なものが買えるのですか?」
「ええ、なんでも安価で売っているお店があるのですよ」
「お嬢さま……、少し見ないうちに、頼もしくなられましたな。このカンカッカカンカーン、感無量でございますぞ!」


*end
作品名:こんにちは、エミィです 作家名:damo