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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】one of A pair

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 いま、ほんの少しでも少年の鋼の理性が負ければ、この手は暴走を始めるだろう。
 司の、優しい体温。それは自分のものより少し高い。
 衣越しに伝わるたったそれだけのことで、頭の芯がくらくらした。安らかな寝息を聞いているだけなのに、残酷な――ひどく残酷な妄想が廻りだして止まらない。
 自分では止めることができない。
 悲しくなる。
 この想いが――罪だとか、汚れたものだなんて、思いたくない。
 悔しくなる。
 ―――けれど。
 少年の指は、妄想の中で妹を犯していく。滑らかな肌に触れ、艶やかな髪を梳く。細い腰を抱きよせる。なりふりかまわず、あらがう腕をおさえつけ。泣いても。叫んでも。
「く……っ」
 吐き出す喘ぎは、苦しい。邪な想いに自分がずるずると溺れていく。
「は……っ」
 触れ合う肌から伝わり、重なりあう鼓動と鼓動。
 こんなにそばにいるのに、ふたりをへだてる血の絆は、なんて遠い。指先さえ触れられない。だから少年は、凍りついたように動けない。きつく目を瞑り、少年はその身を呪縛する妄想を捩じ伏せる。
 ――きっと。
 命を賭けたって、振り向いてくれることはない、妹。
 命を絶ったとて、成就することなどありえない、恋。
 だから。
 柚真人は、眠りに落ちた演技で、ゆっくりと傾ぐ。
 縺れ合って倒れ、少女は目を覚ますだろう。そしてふたりは別々の部屋へ帰るのだ。
 永遠に変わることなき、その血の絆。
 それでも、少年は――ほんの刹那。
 少女とふたり、褥にくずおれる、夢を見る。


 ――人には告げられぬ夢を――見る。