自転車系青春小説 -チャリ校生-
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――キッカケは些細なことだった。僕が大切に生徒手帳に挟んでいた「ドキドキ★マジカルご奉仕フィーバー♪」、つまりはアニメのカードを運悪く落としてしまって、しかもそれを彼女の目の前で落としてしまったという大失態。死亡フラグかと思ったけど、彼女は落ちたカードを拾い上げてこう言ったんだ。
「はいどうぞ。可愛いキャラクターですね。」
僕はもう、それまで僕を含むオタクなんてのは、きっと彼女のような可憐な女性からは冷たい視線で見られ、冷たい態度で接されるとばかり思っていたので、そのときの彼女の言葉と、ささやかな笑顔はとても温かく、僕の中の考えが大きく揺らいだ瞬間だった。
だから、僕も彼女には、心から感謝をこめて、本当に優しく接しようと思ったんだ。
作品名:自転車系青春小説 -チャリ校生- 作家名:東屋東郷