妖怪のいぶき
第十一夜「魔縁」
とある田舎町に代々続く名家あり。
その家には町でも有名な程の美しい跡取り娘が一人居た。
娘は年頃となり婿養子を迎える事となったのだが。
その婿は近隣に住む美青年で、娘とは幼なじみのいとこでもあった。
人々は二人の結婚を良縁と持て囃した。
しかし、二人の結婚後数年が過ぎようとしていたが子が出来る様子が全くない事に不安を覚え。
あらゆる神仏に子が授かるよう願った。
それでも授かる気配がなく、最後の頼みとばかりに他化自在天に願掛けしたところ。
念願叶い、娘は懐妊したのだった。
それから、十月十日後…生まれ落ちた子は蛙の容姿。
娘は戦き泣き叫ぶ、婿は平然とした態度で赤子を片手で掴むと庭先へと消えた。
グキュ
そして、1年後。
娘が再び産気付き、生まれた子はまたしても蛙のような子…
手は水掻きでもあるかのように指の間が塞がっていた。
ふふっふふっ…娘は笑い。赤子を抱き抱え庭先に消えた。
グシュ、ゴリ、グシュ、ゴリ
何かが飛び散り襖に赤い模様を作り出す。
「醜いのは嫌い」
「やはりダメなのか、俺達では」
「何を言うの兄様」
「し、知っていたのか…」
「ふふっ大好きな兄様、綺麗な兄様の事なら何でも…」
この夫婦は名家の生まれ。醜い者は嫌いのようだ。
そして月日が流れ名家に立派な跡取りが誕生した。
勿論無事に生まれた…優美で名家に相応しい男の子が。
そう僕がね。
それと、醜い夫婦はもうこの世に居ない…僕の兄弟を手に掛けた罰でね。
グシュゴリ、グシュゴリ……
ふふふっ。
今回の妖怪:該当なし、強いてあげるなら第6天魔王(他化自在天)。今回は民間伝承の一説を元に創作しましたが、これがもし本当の話なら怖い事です。けれど、閉鎖的な山里などでは近い事が行われていたと云われています。