花園学園高等部二学年の乙女達
花園学園と二人について
神沢裕子は賢い女だった。
一見して地味な顔立ちではあったが、なぜか人を惹き付けるオーラを放っていた。それは幼少の頃から有名な話で、小等部までは女子ハーレムをはべらせたりもしていた。
しかし彼女は中等部からぴたりとそれをやめた。
簡潔に言うと面倒だったからである。
…彼女は元来は面倒見がよい性分なので、自分を慕うものたちを結局は無下にはできなかった。
だから一見冷たい彼女だが、最終的には皆めろめろになってしまうという。
それが面倒だった。
…このように彼女は基本的に面倒くさがりだが、しかし今ではそれを知っているのは学園にたった二人だけである。
ようするに猫を被る才能も学園一であったと言える。
そしてその実、彼女自身もそれを承知していた。
だからこそ、彼女は我が花園学園高等部2学年を影ながら牛耳っていたのである。
…一方芳田咲は非常に恵まれた容姿を持っていた。
さらりと軽い栗色の髪に、細長のどこか憂い気な瞳がよく映えていて、なにか外国の孤独な貴族を思わせた。それは幼少の頃から有名な話で小等部頃から女子ハーレムをはべらせていたりする。幼少期は女の子と勘違いされたかされずか、変なおじさんにさらわれそうになったことが多々ある。
もちろんこれも周知の事実で、彼はこれを利用して未だに好き勝手きままなハーレム生活を送っていた。
ここで一度我らが花園学園について話そうではないか。
我花園学園は100年以上続く名門中の名門女子学園である。
幼稚舎から大学院まで続いており、いわゆる『お嬢様』方が通っている。
丈の長いスカートと赤いリボンを結ばれたセーラー服姿でしゃなり、しゃなりと歩く様子はなかなか壮観であり、また時代錯誤な空気が否めなくもなかった。しかし彼女たちは皆それを誇りに思っていた。むしろ周りのちゃらちゃらした人間たちは無知で、下品な生き物だわ、と見下す生徒たちも多くいた。
…ところがである。
どの女子学園も同様に通る道のとおり、我らが花園学園もだんだんと女子だけでは運営がきかなくなった。
…そして案の定、一般の男子高校生の受け入れ、つまりは『共学』が決まったのである。
作品名:花園学園高等部二学年の乙女達 作家名:川口暁