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私のやんごとなき王子様 理事長編

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 え? 私?
 もう一度じっと視線を返すと、やっぱり理事長が私を見て目配せをしている。
 ――もしかして、そろそろ取材を終わらせたいのかな?
 時計を見たけどまだ予定されている時間を10分程残している。だけど私は思い切って声を上げた。

「取材の途中ですが申し訳ありません! 理事長は次の予定が詰まっておりますので、そろそろ取材を終了させて頂きます!」
「ええっ?! まだ終了時間まで少しあるでしょう!?」
「そんな、困りますよ!!」

 あちこちから不満の声が聞こえる。
 だけど私は引かない。

「大変申し訳ありません!」

 そしてドアを開けて深々と頭を下げた。

「どうぞお引き取りください」

 そして隣りで戸惑う子に小声で

「記者の皆さんをエントランスまで案内してもらえる?」

 と頼むと、その子も慌てた様子で廊下へ出て声を張り上げた。

「すみません! こちらへお願いします!」

 さすが三島君率いる実行委員だけのことはある。急な対応も見事だ。
 まだ質問をする人もいたけど、理事長も申し訳ないと謝るだけで質問に答える気がないと分かったのか、ぶつぶつ言いながらも取材陣は部屋から出て行った。

「ありがとう、小日向さん。僕の合図に気付いてくれて」

 すっかり人気がなくなると、理事長が私の前にやって来て小さく微笑んだ。

「いえ、もし違ったらどうしようかと思ったんですけど……」
「ちゃんと理解してくれたじゃないか。君はとても有能な女性だ。是非、僕の秘書になって欲しいね」
「ふふ、ありがとうございます」

 お世辞でもそんな風に言ってもらえるなんて嬉しいな。

「どうしても早く仕上げてしまいたい仕事が残っててね。助かったよ」
「それでは私はここの片付けをしてからまた真壁先生の所に戻りますね」
「ああ、よろしく頼むよ」
「はい!」

 部屋を出て行こうとした理事長が、突然立ち止まってこちらを振り返った。
 見送ろうとしていた私は、少し驚いて背の高い理事長を思わず見上げる。

「そうだ、忘れる所だった」

 え?
 そう言って再び私の前に戻って来た理事長は、笑顔を作ると私の右手を取り、少し首を傾げて言った。