私のやんごとなき王子様 理事長編
気付けば取材の時間。取材は学生の様子を一通り見て写真やインタビューをして一番最後に理事長と話しをするという流れ。
合宿の取材も全部終わり、残すは理事長へのインタビューだけ。
私はバタバタと理事長のいる部屋へと急ぐと、部屋のチャイムを鳴らした。
普通の部屋ならノックでいいんだけど、このスイートルームは広いからノックでは奥にいる人まで音が届かないのだ。本当、すごい。
ブーというどこか間の抜けた音がドアの向こうに聞こえてしばらく、ドアが開いた。
「やあ、小日向さん」
「理事長、もうじき取材の方がこちらへ見えます」
「おや、もうそんな時間かい?」
「はい、お部屋の準備も終わってますし、実行委員の子も待機してくれています」
私が少し早口で言うと、理事長はうんと頷いて廊下へ出て来た。
「それじゃあ行こうか。仕事を頼んですまなかったね」
「いいえ、とんでもないです」
「取材が終わるまで、部屋にいてくれるかな?」
「あ、はい。もう一人の子と一緒に何かあったらすぐ動けるように待機してます」
「助かるよ」
ふわりと髪をかきあげる仕草がまるでモデルのように素敵で、私は驚いた。
遠くで見てもカッコいいと思ってたけど、こうして間近で見るとその整った顔立ちは直視出来ないほど綺麗だ。
また理事長の顔を見てぼんやりしちゃった! いけない、ちゃんと仕事しなきゃ!
私は頭を振ると、取材用に準備した部屋のドアを開けた。
中に入ると、私がセッティングした椅子に記者さんがズラリと座っていた。そして開いたドアに一斉に視線を向けると、次々にシャッターが切られ始めた。
わあ! 目がくらむっ!
私はドアの横に立っていた実行委員の子と並んで、部屋の後方から取材の様子を見守る。
本来なら秘書さんが取材の進行役なんかもするらしいんだけど、今日はいないので予めインタビューする順番を各社毎に決めていた。
流れるように、時には鋭く質問の受け答えをする理事長を、私は憧憬の目で見つめていた。
隣りの子も同じだったようで、瞳がキラキラというか、ハートに輝いている。
「理事長素敵……」
なんて呟いてるし。でも本当に素敵って言葉しか出て来ない。
「はあ……」
作品名:私のやんごとなき王子様 理事長編 作家名:有馬音文