私のやんごとなき王子様 理事長編
『演劇祭の後、僕は君にちゃんと気持ちを伝えられなかったからね。お互いの立場とかを考えてしまって、頭の中でもう一歩踏み出せなかったんだと思う……だから君に恋をしても良いだろうかという、曖昧な言葉で逃げてしまった。だけど僕は学園の理事長で君は生徒。これは現実で、僕たちは随分年も離れている。だから、きちんとけじめが着く君の卒業と同時に、もう一度気持ちを伝えさせて欲しいんだ』
この申し出を断る事が出来るだろうか? 私は何度も頷いた。
「―――はい……はい。私、いつまでだって待ちます。そう思って下さってるというだけで、今、とても幸せな気持ちでいっぱいです……卒業式を励みに、しっかり勉強します!」
満面の笑みで答えて、私は理事長との会話を終えた。
自分で選んだ道だ。
どんな困難があろうとも、絶対に揺るがないと決めたんだ。
携帯電話を握りしめ、私はさなぎ達が待つ図書館へと走った。
さなぎたちに負けない位、私は今幸せだ! そう、胸を張って言える。
だって私にはあんなに素敵な人がいるのだから。
私のやんごとなき王子様 ――理事長編―― 了
作品名:私のやんごとなき王子様 理事長編 作家名:有馬音文