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私のやんごとなき王子様 理事長編

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 最終幕―――

 雷鳴轟く湖の側の廃墟へと、オデットの友人達が慌てて逃げ込む。そこへジークフリート王子が取り乱した様子で走って来た。

「ああ、オデット! 許して下さい!」

 王子の姿を見たオデット姫は悲しみに溢れたその美しい顔を歪め、ジークフリートから逃げる。

「私にはもう、あなたを許す力がありません。すべては終わったのです」

 廃墟へと走るオデット。それを追いかけるジークフリート……

 この後二人は湖に身を投げるのだ。

 ゴオオオオオッという湖の水が氾濫する轟音と同時に舞台は暗闇になり、廃墟から悲しげな白鳥達の歌声が響いた。

 私は夢中で舞台を見つめ続けた。

 しばらくすると闇は晴れ、静かで美しい湖面に白鳥達の群れが現れた。
 その白鳥達の姿はどこまでも透明で、清らかだった。


 私は客席や舞台袖から沸き起こる大喝采を遠くに聞きながら、しばらく呆然と立っていた。
 知らずに握っていた幕は汗で湿気を帯びていて、ゆっくりと降りて行く緞帳(どんちょう)がぐにゃりと歪んで見えた。

 私は泣いていたのだ。


 ――終わった。全て……。
 高校生活最後の演劇祭のその全てが今――終わったのだ。