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「うわあ……大盛況！」

　私は入場者にパンフレットを渡す仕事を終え、ホールの客席へと入った。

　学園内に併設されているこの演劇場は、休日には海外のバレエ団や交響楽団なんかが来て使う事もある本格的な劇場だ。
　学園の父兄はもちろん一般のお客さんやマスコミも合わせると、１０００もある座席は立ち見が出る程満杯だった。

　こんなにたくさんの人が、私達が作り上げた劇を見るんだ。
　去年、一昨年と同じようにやって来たはずなのに、今年は緊張感が違った。それはやはりこれが高校生活最後だからかもしれない。

「おい」

　聞き慣れた不遜な声に振り向くと、鬼頭先生が眉間に皺を作ってこちらへやって来た。

「先生。お疲れ様です」

　冷めた目で辺りを見回し、鬼頭先生は私の隣りに座ると舞台を見下ろした。

「劇なんか興味は無いんだがな……」
「まあ、そう言わないで。せっかくだし一緒に観ましょうよ」

　今朝鬼頭先生に会った時に一緒に劇を観ようと誘ったのだけど、本来なら文句の一つも出そうな先生の台詞に笑いながら、幸せを感じる。

　高校最後の演劇祭を好きな人と一緒に観れたなんて、いい思い出になるもの。

　そんな事を一人思いながら、私は段々と落ちて行く場内の照明に心を躍らせた。