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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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 少し体を屈めて私の目の前で勝ち誇ったように言う先生の迫力に、私は思わず一歩後ろに下がる。 

「たっ……多分」
「さっきは愛情不足だと力説していただろう?」

 さらに意地悪そうな顔をする先生に、私はぐっと息を吸い込む。

「じゃあっ! 試しに愛情を補給してみたらどうですか?」

 ここで引き下がったら負けだと思った私は、下げた足を前に出して逆に先生に詰め寄った。

「――なるほど、なかなかいい提案だ」

 ふとほんの一瞬笑うと、先生はくるりと踵を返して歩き出した。

「お前の忠告、ありがたく受け取ろう。そろそろ戻るぞ、風が出て来た」
「え? あ、はいっ」

 この勝負は私の勝ち……かな? 先生は水原さんの事を考えていたのだろうか? どうして私をここに誘ってくれたのだろうか? そしてどうして子どもの頃の悲しい過去を話してくれたのだろうか?
 もしかしたら単なる気まぐれかもしれないけど、前を歩く鬼頭先生の後ろ姿が少しだけ楽しそうに見えて嬉しかった。

 この口の悪い寂しがり屋の先生を、少しでも私が元気づけてあげられるならそれでいい。