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私のやんごとなき王子様 鬼頭編

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 真壁先生の所で手伝いをしながらも、私はずっと鬼頭先生の言った言葉が頭から離れなかった。
 でもよく考えてみればそうよね。だって鬼頭先生はきっと真壁先生と一緒に車で来てるはずだから、電車を使う訳ないもん。だから本当に私を待っててくれたんだ。
 なんかちょっと嬉しいかも。文句ばっかり言ってるけど、なんだかんだで私のこと気にかけてくれてるんだな。
 そんな事を考えながら仕事をして、漸く校長先生の挨拶が始まった。

 校長先生の挨拶はいつもすごく簡潔で、長ったらしくないから好きだ。
 最高の演劇祭になるよう、全校生徒力を合わせて怪我が無いように頑張って下さい。という言葉を最後に、乗船が始まった。


*****


 フェリーに乗ってからは各担当のリーダーと引率の先生の橋渡しをするのが私の仕事。
 乗り遅れた人がいないか、具合の悪くなった人はいないか、バタバタと走り回って気付けば昼近くになっていた。

「はあ、疲れた……」

 やっと落ち着いて自動販売機でジュースを買うと、私はさなぎの姿を探すことにした。
 お昼を一緒に食べようと約束していたのだ。
 しかしどこにいてもすぐに見つけられる位元気のいいさなぎが、どういう訳か見つからない。

「おかしいな。いつもなら1キロ先にいても分かるんだけど」

 辺りを見回していると、ふと視界に入った人影。
 あれ? え? あれってもしかして……?
 私は急いで通路の端で柵に持たれて項垂れる三島君の側に駆け寄った。

「三島君、どうしたの?」
「……こ、小日向君か。どうした、何か問題でもあったか?」

 いや、問題がありそうなのは今の三島君そのものなんだけど……。

「問題っていうか……」

 思わず言葉に詰まってしまう。
 いつもの背筋がピンと伸びた彼からは想像もつかない程に項垂れ、そして顔面はというとただでさえ青白い顔が、いつもにも増して蒼白だ。

「三島君……、もしかして船酔い? てゆーか船酔いだよね?」
「も……問題ない」

 だから問題ないって言う顔じゃないんだってば。

「三島君、鬼頭先生の所に行こう? 私も一緒に行くから」
「いや、そこまでは……」