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私のやんごとなき王子様 真壁編

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「先生、戻りました」
「小日向……ちょっとこっちこい」
「はい?」
「悪かった!」
「えっ?」

 私は驚いた。
 だって先生が急に私に深々と頭を下げたのだ。

「土屋の事で腹が立ってたとは言え、お前に押し付けて帰っちまって……これじゃあどっちが教師だか分かんないな」
「そんなのいいです! いいですから、頭上げて下さい! 恥ずかしいですっ!」

 慌てる私に先生はゆっくりと顔を上げて、叱られた子どものような目で私を見つめた。

「いや、本当に大人げないよな。お前に頼ってばっかりだ。嫌な時は嫌だって、はっきり言って良いんだぞ?」

 先生の顔を見ていたら、何だか急に可笑しくなってつい笑ってしまった。

「……くすっ。先生ったら、いくら私でも本当に出来ないと思った時はちゃんと言います。だからそんな顔しないでください」

 おっきな先生の頭を、思わず撫でそうになってしまう。

「―――本当に無理はしないでくれ。情けないが今年は例年以上に仕事が多くて、自分の仕事で手一杯でお前達の事まで気を回す余裕がないみたいだ」
「はい、ありがとうございます。無理はしません」

 先生は本当にいい人だなあ。先生の彼女はきっと幸せだろうな……って、私ったら何考えてるんだろ。

「えっと、じゃあ私、仕事に戻りますね!」

 変な事を考えてしまった私は、恥ずかしさで赤くなりそうになった顔を隠すため急いで自分の仕事を始めた。
 ふと窓の外を見ると、遠くに島が見えた。

 トクンと胸が鳴る。
 もうすぐ到着するんだ。高校生活最後の合宿が、本当に始まるんだ―――