私のやんごとなき王子様 真壁編
3日目
「先生、遅くなりました!」
私は朝一番、教室に向かう前に職員室に立ち寄り、真壁先生に例の担当希望記入用紙を提出していた。
頭を下げて用紙を握った腕をずいと差し出した格好のままで止まる私に、
「おう、決めたか」
と、相変わらずの調子で笑ってそう言うと、先生は用紙を受け取った。次にそこに書かれた部署を見てニヤリと口の端を上げる。
「そうか、俺達の手伝いをやってくれるか! いやあ、助かる。正直お前が他を選んだら困るって思ってたんだ。人手が足りなくてなあ」
そう言って私の頭をぽんぽんと叩いた。
「そうですか……今からこき使われるのが目に浮かびますね」
「ははっ! まあそう言うな。色々お前には働いてもらわないとな」
「頑張ります。それじゃあ失礼します!」
「おう……って、ちょっと待った!」
清々しい気持ちで肩を返した所で呼び止められ、私は中途半端な格好のまま先生を振り返った。
「お前、学校終わってから用事あるか?」
「え? いえ、ありませんけど」
首を傾げると、先生は一瞬何か考えてすぐに小さくあっと言って私にメモ紙を渡した。
「いやあ、実は引率の先生方から買い出しを頼まれてるんだが、ちょっと仕事が立て込んでて行く暇がないんだ」
これってもしかして。
「それで、大変申し訳ないんだが、そのメモに書いてある物を買いに行って欲しいんだ」
やっぱり……もうすでに先生の手伝い作業が始まったみたい。
早速演劇祭の手伝いが出来ると思えば、一人で買い出しもまあ、楽しいか。
「分かりました、今日中に買えばいいんですよね?」
「悪いな、仕事が早く終わったら俺も行くから、携帯はいつでも繋がるようにしといてくれ」
「はい」
「代わりと言っちゃなんだが、今日の昼飯は俺がおごるからさ」
申し訳なさそうにする先生に、私はメモを見ながら首を降った。
「別にいいですよ、細々したものが多いけど、そんなに重たい物はなさそうですし。それに合宿に必要な物は私も買わないといけなかったんで、丁度よかったです」
笑顔で言うと、先生ははあと大きめのため息を吐いてポケットからちょっとよれた封筒を引っ張り出した。
「先生、遅くなりました!」
私は朝一番、教室に向かう前に職員室に立ち寄り、真壁先生に例の担当希望記入用紙を提出していた。
頭を下げて用紙を握った腕をずいと差し出した格好のままで止まる私に、
「おう、決めたか」
と、相変わらずの調子で笑ってそう言うと、先生は用紙を受け取った。次にそこに書かれた部署を見てニヤリと口の端を上げる。
「そうか、俺達の手伝いをやってくれるか! いやあ、助かる。正直お前が他を選んだら困るって思ってたんだ。人手が足りなくてなあ」
そう言って私の頭をぽんぽんと叩いた。
「そうですか……今からこき使われるのが目に浮かびますね」
「ははっ! まあそう言うな。色々お前には働いてもらわないとな」
「頑張ります。それじゃあ失礼します!」
「おう……って、ちょっと待った!」
清々しい気持ちで肩を返した所で呼び止められ、私は中途半端な格好のまま先生を振り返った。
「お前、学校終わってから用事あるか?」
「え? いえ、ありませんけど」
首を傾げると、先生は一瞬何か考えてすぐに小さくあっと言って私にメモ紙を渡した。
「いやあ、実は引率の先生方から買い出しを頼まれてるんだが、ちょっと仕事が立て込んでて行く暇がないんだ」
これってもしかして。
「それで、大変申し訳ないんだが、そのメモに書いてある物を買いに行って欲しいんだ」
やっぱり……もうすでに先生の手伝い作業が始まったみたい。
早速演劇祭の手伝いが出来ると思えば、一人で買い出しもまあ、楽しいか。
「分かりました、今日中に買えばいいんですよね?」
「悪いな、仕事が早く終わったら俺も行くから、携帯はいつでも繋がるようにしといてくれ」
「はい」
「代わりと言っちゃなんだが、今日の昼飯は俺がおごるからさ」
申し訳なさそうにする先生に、私はメモを見ながら首を降った。
「別にいいですよ、細々したものが多いけど、そんなに重たい物はなさそうですし。それに合宿に必要な物は私も買わないといけなかったんで、丁度よかったです」
笑顔で言うと、先生ははあと大きめのため息を吐いてポケットからちょっとよれた封筒を引っ張り出した。
作品名:私のやんごとなき王子様 真壁編 作家名:有馬音文