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虹という物語

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0.1 消えた姫君


若くして、戦闘部隊第一部隊小隊長になったゼンは、この頃活発化している魔物(モンスター)に頭をを悩まされていた。

ちなみに、【戦闘部隊】というのは、この世界に8つの都市に1つずつある、治安を守るために作られた部隊のことである。
この部隊には、能力が強いものしか入ることはできない。首都の戦闘部隊ならなおさら試験は厳しい。
その中でもゼンは、剣術、思考力、能力においてずば抜けた力を持っていることから、第一部隊小隊長に選ばれたのだった。(戦闘部隊の仕組みは話の最後)

最初はうれしくていきいきしていたゼンだったが、隊長の代わりを務めたりと、あまりの隊長の大変さ今は苦労している。

しかし、嫌だとは思ったことはなかった。

今日も魔物のことで、部隊を動かしていた。

「第一部隊はワイドの森へ行き、魔物の数を減らしてくる。第二部隊は第一部隊のサポートを。第三部隊も・・・。」

ゼンはいつものように、全部で第七部隊まである部隊にそれぞれの役割を言い渡した。とりあえず、ワイドの森の魔物が活発化していると聞いていたので、まずはそこを鎮めるのが先決だった。

しかし、なぜ魔物の討伐をしなくてはいけないのか、ゼンにはいまいちよく分からなかった。なぜなら、この世界にある大陸の各町は、その大陸の都市に置かれている
元素集合体とリンクしていて、守られている。それも相当のものだ。人があまり近づかない森の魔物の数を大幅に減らしても、町にとってはなにもないのだ。

そこが、疑問だった。

しかし、上からの命令に逆らうことはできない。だから、ゼンは部隊を動かしていた。

ゼンは第一部隊の小隊長でもあるから、ゼンは森の中に入らなければいけなかった。しかし、そんな時にこんなことは起こるものだ。

『帝国戦闘部隊各小隊長、至急本部まで戻るように!!』

スピーカーから大きな音をたてて、戦闘部隊総隊長の声が辺りに響く。ゼンは副隊長、アリーシャにこう言った。
「アリーシャ。私は至急戻るように指令が出たので、そっちにむかう。これからの指示は副隊長である、君に任せる。」
「分かりました。全員戻れるよう尽くします、隊長。」
「あぁ、まかした。・・・僕はもう行くね、アリーシャ。」

ニコッ、とゼンが微笑むと、アリーシャの顔はたちまち朱に染まっていった。それを不思議そうに見たあと、ゼンは本部へ向かった。

「・・・もう・・・。どうしてそんな顔見せるんですか、ゼン隊長ぉ・・・!」

後ろのほうでアリーシャの声が聞こえた気がしたが、有能な人だ、とゼンは気にせず歩きだした。

走ってまわりを見ていると、やっぱり慣れないなぁ、とゼンは呟いた。

ゼンが帝国に来たのは5年前のことだった。

その頃から能力などの技術に力を入れすぎたこの世界は、もっとも肝心な生活面での技術はどんどん衰退していった。
昔は【自動車】という、便利な物があったようだが、能力に使うものがなくなるということで、途中から製造中止になり、今では造る部品もなくなってしまった。

それでも、能力の発達のおかげで魔物の言うことを聞かせることで、移動する時にはそれを使えばよかった。
よく、教えこむ(叩きこむ)から、突然暴れたりすることはない。人間を害と思わなくなるからだ。
こうなれば魔物もとてもかわいいのにな、とゼンは思う。まぁ、とにかく、生活面の技術が衰退していることで貴族街と市民街では、町の造りがまるで違う。
例えば、ゴミを捨てる場所が市民街では特定の場所しかないが、貴族街ではゴミ捨て場が動く。ロボットなのだ。
もし、技術がもう少し発達していたら、市民街にもこんな設備が・・・、とゼンはいつも思っていた。
そんなことを考えているうちに、ゼンは本部まえまで来ていた。
戦闘部隊本部がある建物は相当でかい。さすが帝都!とでもいうべきか。建物の中もすごくてエレベーターという重力を調節して、上に上がったり、
下に下がったりする機械がある。ゼンはそき機械、エレベーターにのり最上階を目指す。

(ところで、突然召集させられるなんて、何があったのだろう。)

ゼンが心の中でつぶやいた時、となりにいた人がゼンと似たようなこと言う。

「よぉ、ゼン。突然のり召集で参っちゃうよなぁ。」

今、ゼンに話しかけたのは、戦闘部隊第四小隊隊長、そして、ゼンと同じ時期に入隊した友人、リアギスだった。

「・・・そうだね。リアギスは確か・・・、エルバース古城だったよね。そこまでも通信が行ったんだね。」

エルバース古城というのは、首都から結構な距離があり、昔は緑の髪の一族が暮らしていたという。

「先輩たちは近すぎです!いくら普通の人より通信が早くても、ヤンクルからじゃ関係ないんですよ?!どれだけ必死になって帰ってきたか・・・。」

この声は、今から2年前に入隊したアイリスだ。―女と思っていると痛い目に合う―これがアイリスの合言葉みたいなものだった。
だが、その力に負けない能力をしっかり持っている。だから、ゼンたちと3年ものキャリアがあるにも関わらず、全部で第七小隊まである中の、第六小隊隊長に選ばれている。
その実力とは、まだ若いのに全部で5つの能力燃料を使いこなす多燃料者である。普通の人は力の制御ができなくなってしまうから、死んでしまうと聞く。
それに、武闘を主体とし、軽い剣術をこなし、なおかつ癒術師(ヒーラー)としても活躍できる、本当に万能な人間なのだ。もしかすると、あと何年もすれば、戦闘部隊隊長、いわゆる総隊長になる可能性も高いのだ。

とりあえずこの話は置いといて。

アイリスが行っていたヤンクルとは、商業の町ヤンクルと言われ、その町から帝都へ色々な物が送られてくる。確か、帝都からは2、3時間はかかる距離だったと思う。
ゼンはその言葉に返事をした。

「がんばったんだね。」

ニコッというスマイルまで付けて。その返事の仕方にアイリスは顔を真っ赤にした。

「が、が、頑張ったとか、そんな程度じゃありません!!!」
「まぁ、まぁ。そう照れるな。とりあえずこんな短時間で来れたのはすごい。どうやったんだ?」

リアギスはそう茶化すと、アイリスはますます赤くなってうるさい!と叫んだ。それから、軽く咳払いをすると説明をした。

「聞いて驚かないでください?わたし、今研究中のテレポートでここまで来たんです!!」

・・・・・・・・・・

軽い沈黙が辺りを包む。そして、リアギスが最初に口を開いた。

「アイリス。ウソはいけないぜ?」
「そうだよ、ウソはいけないよ、ウソは。」

ゼンもリアギスもまったく信じようとはしなかった。それもそうだ、テレポートというのは、一定の距離を一瞬で移動する術のことを言う。そんなこと、だれも信じるはずがなかった。

「しょーがないですね。見せてあげます、わたしの力を。」

そう言って目を閉じたアイリスは集中をして、アイリスのまわりから光が溢れ出したかと思うと、・・・目の前から消えていた。
そして、驚く暇もなく、ゼンの脳天に軽い衝撃が走る。

「っつ・・・!」

ゼンが衝撃を感じた真後ろを向くと、そこには満面の笑みで立つアイリスの姿があった。

「だから言ったでしょう?」
「ほんとこえー女。」
作品名:虹という物語 作家名:リゲル