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１１日目


「ふー。終わったね〜」

　大量の荷物を抱えた私とさなぎは、フェリー乗り場へと向かっていた。
　合宿も無事に終わり、今からまた船に乗り込み学園へと帰るのだ。

　とはいっても学園へ帰った後、今日はすぐさま解散。各自、合宿で溜まった疲れを癒す意味も込めて、自宅へと帰宅する事になっている。
　明日は本番一日前。明後日はいよいよ本番だ。確かにこの辺で一度、体を休めないとキツイかも。


　上手く日程組まれてるなぁ、なんて感心しながら私は船に乗り込んだ。

　甲板から宿舎を振り返る。
　この１週間、長いようで短かった。

「小日向君」
「――三島君」

　最後尾の甲板で段々と遠のいて行く島を見ていた私に、三島君が声を掛けてくれた。
　こんな風にたくさん三島君と接する事になるだなんて、１０日前まで思いもしなかった。そして、　こんなに好きになるなんて事も――

「とうとう合宿も終了だな」
「うん」
「実行委員としてよく頑張ってくれた、有難う」
「ううん、三島君こそ」
「本番まで後少し。とにかく今日はゆっくりと休んでくれ」
「うん」

　隣りで私と同じように手すりに手を掛け、遠く小さくなっていく島を見ながら三島君が言葉を続ける。
「昨日の事……だが……」

　小さく、何かを考え込むように三島君が漏らした『昨日の事』と言うフレーズに思わず私は身構えた。水原さんの三島君への気持ちが、私の心に波のように押し寄せてくる。

「その……嫌な思いをしたんじゃないかと……変な事に巻き込んでしまって……」　

　途切れ途切れに言葉を選びながら言う三島君の右手に、グッと力がこもるのが見えた。　
　――三島君も辛いんだ。

「ううん、全然。本番まで皆で力を合わせて絶対成功させようね！」
「あ……ああ！」

　私は今の自分に出来る精一杯の笑顔で三島君に微笑んだ。
　――水原さんの優しさにせめて報いたい。