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私のやんごとなき王子様 三島編

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10日目


「え? 花火、大会?」
「え〜、やだ美羽。知らなかったの?」

 そう言って呆れたように言うさなぎに向かって、私はテーブルの上から身を乗り出した。

「知らないよ! そんなの合宿のしおりに書いてあったっけ?」
「書いてはないけど、皆知ってるよ? この島の近くの無人島が打ち上げ場所になってて、クルージングしながら花火大会を観覧するっていうのを今年から旅行会社がやるんだよ。それでここからはもうバッチリ最高のポイントで見えるんだから」

 ちょっぴり誇らし気にそう説明してくれるさなぎに、私は目を輝かせた。

「本当に!? そんな素敵な企画考える会社があるんだね!」
「うちの理事長が一枚かんでるらしいよ。なんでもその島も理事長の所有地らしくてさ、知り合いの船舶会社と旅行会社に企画を持ち込んだとか」
「へえ〜。ほんとにうちの理事長って凄い人なんだね……ていうか、そんなに詳しいさなぎが凄い」

 まさかの詳細まで知っているなんて、さすがさなぎ。情報網が半端じゃない。でも花火大会か――三島君と一緒に見れたら素敵だろうな……。

「ね、美羽は誰と行く?」
「えっ?誰ってさなぎと一緒じゃないの?」
「何言ってんの〜! 折角のチャンスじゃん! 美羽だって一緒に見たい人いるでしょ?」

 そりゃいるけど……。でも――っていうか、

「さなぎにはいるの?」
「あははっ。実は――さ、この合宿中に彼氏が出来たんだよね〜」
「えぇ!?」

 恥ずかしそうに少しだけ俯いて衝撃の告白をしたさなぎを前に、私は思わずのけ反った。

「いいいいい、いつの間に!?」
「いやぁ〜、同じ担当の子なんだけどね〜」

 嘘。どうして。さなぎ〜〜〜!

「佐和山」

 テーブルの向こう側から、ふいに声をかけられた。
 視線を馳せると、そこには一人の男子の姿が。えっと、あれは確か3組の――

「あ、米倉〜!」

 そう、米倉君だ。
 米倉君は私を目に留めると、にっこりと笑いながら軽く会釈をしてくれた。つられて私も思わずペコリ。

「紹介します! 私の彼氏の米倉君です!」

 照れくさそうに、けれどどこか誇らしげに胸を張るさなぎ。その顔からは幸せがにじみ出ていて、何だか私まで嬉しい気持ちになる。