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私のやんごとなき王子様 三島編

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 印刷所に着くと、三島君は慣れた様子で受付の人と会話をしていた。

「星越学園の三島です」
「ああ、担当のものをすぐお呼びしますので、あちらで掛けてお待ちください」

 受付のおばさんはそう言って、奥の応接ソファーを指した。

「はい、有難うございます。小日向君、行こう」

 そう言って私に視線をくれた後、ソファーに向って三島君は歩き出す。
 こうして並んで歩くと、三島君が意外と背が高くて足も長い事に気が付く。三島くんは極めて普通に歩いているのだろうけど、彼に合わせようとすると私は少し早歩きにならなくちゃいけない。……男の子なんだなぁ。

 トスンとモスグリーンの品の良いソファーに腰掛ける。
 三島君も私の隣に腰掛けていて、なんだかその近い距離に少しだけ緊張してしまう。

「ごほんっ」

 三島君が小さく咳払いをした。チラリと顔を見ると、眼鏡の奥の切れ長の瞳は遠くを見据えていて、私の方には目もくれない。真面目なんだな――、なんて私は感心してしまう。
 
 そんな事を思いながらソファーに座って待っていると、担当者と思われるおじさんがヒョッコリと現れた。

「どうもどうも。お待たせしました」
「いえ、お世話になっております」

 素早く起立して頭を下げる三島君に合わせて、私も慌てて立ちあがり挨拶を交わす。三島君は学生とは思えないほどに本当に堂々としていて、私は少しだけ見惚れてしまった。

「まま、どうぞ」

 おじさんがそう言って着席を促すので、私と三島君は再びソファーに腰を掛けた。う……やっぱり少し、距離が近くて何だか恥ずかしい。

「こちらがパンフレットのサンプルです。誤字脱字がないよう、こちらでも確認のうえ作成しましたが、もう一度ご確認をお願いします。あ、それとデザイン面での変更点なんかもあれば、今日中なら一週間後までに間に合いますので」
「拝見します」

 そう言って三島君はおじさんからパンフレットの見本を受け取り、私にも一冊手渡してきた。

「小日向君も誤字等ないか確認してくれ」
「はいっ」

 パンフレットの表紙では土屋君の描いた美しい白鳥が翼を広げている。亜里沙様の白鳥もきっとこんな風に綺麗なんだろうな――。