私のやんごとなき王子様 三島編
生徒会室に着いた私は、恐る恐るノックをした。
「はい」
中から三島君の声で返事があった。
「小日向……です」
「入りたまえ」
ガラリと扉を開け中へと入ると、三島君はPCに向かっていた手を止め立ちあがってくれた。
「どうした?」
私を見て眉をひそめる三島君。うっ、やっぱりこんなギリギリにいきなり現われても困っちゃうよね。
「あの……。私、実行委員として希望をだしたから。その……よろしくお願いします!」
ぶんっと音が鳴りそうな勢いで頭を下げた。
顔を上げると三島君は少し驚いたような顔をして、それからすごく優しく微笑んでくれた。
「そうか……。これからよろしく」
そういう三島君の顔はどこまでも穏やかで、私は三島君ってこんな表情もするんだな――なんてぼんやりとその顔に見入ってしまっていた。
「さぁ、忙しくなるぞ! 小日向君、実は今から演劇祭のパンフレットを依頼した印刷所に行くんだが、ついて来てくれるだろうか?」
「うん! もちろん!」
「そうか……! ははっ、では行こうか!」
そう言った三島君は、机の角で思いっきり足をぶつけた。
「……っ〜〜!」
足を押さえながら声も出さずに苦痛に顔を歪める三島君。
「だ……大丈夫?」
「……問題無い」
私が顔を覗き込んでそう言うと、きっと前方に視線をやって扉に向って歩き出す。
ガコン!
あ、今度は扉に挟まれてる……。
「三島君?!」
「大丈夫だ。何も問題は無い。お……俺とした事がこれ位の事で動揺するとは」
「動揺?」
「もっ、問題無い! 行くぞ、小日向君!」
「はいっ!」
なぜか敬語の私。
でも三島君との実行委員、なんだか楽しくなりそう!
作品名:私のやんごとなき王子様 三島編 作家名:有馬音文