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私のやんごとなき王子様 三島編

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「俺は以前からずっと、小日向君と同じ仕事をしてみたいと思っていたんだ」
「私と?」

 今度もやっぱり三島君が苦しげな世界を破ってくれた。
 三島君と一緒にこうしていられるのは凄く嬉しいのに、静か過ぎる海辺は私を切なくもさせた。そんな空気を察して喋りかけてくれる三島君は、やっぱり優しいと思う。

「小日向君は成績も優秀だし、それに……」
「それに?」
「いや……。……俺が生徒会長に立候補した時、積極的に事務の仕事を手伝ってくれただろう?」

 確かに、三島君が生徒会長に立候補した時の選挙委員会に私は所属していた。というのも人手不足で困っていた真壁先生にどうしてもと頼まれたからなのだ。

「それも君は真壁先生から頼まれて、仕方なく参加したようなものだ。なのに、君は一番頑張ってくれていた」
「だって、私なんかに頼んでくれたんだもん。自分に出来る事は全力で頑張らなきゃ、バチが当たるよ」

 少しだけおどけてそう言うと、三島君はクスっと笑ってくれた。

「でも俺は……その時の小日向君を本当に感心したんだ。自分の自由な時間を潰されるのに、役員に立候補したわけでも無い君が、すごく頑張ってくれていて……だから」

 そこで一度言葉を切ると、三島君は私の顔を正面から見据えた。眼鏡の奥の切れ長の目がスッと私を見つめる。鼓動が急激に高鳴っていく。どうしよう、顔が赤面するのがバレたりしないかな?

「だから、今回こうして一緒に仕事が出来て嬉しい。それに小日向君を誘って本当に正解だった。君のおかげでとても助かっている。有難う」

 そう言うと三島君は、私の右手をそっと握った。それは感謝の意を示す握手だっただけなんだろうけど、私はすごくときめいた。

「う……ううん、こっちこそ! 三島君の役に立てたなら嬉しいよ!」

 気持ちを隠すように大げさに喜んだ。
 三島君はそんな私を見て、にっこりと微笑んでいる。
 そんな二人の間をビュゥと一陣の風が吹き去った。

「風が出てきたな。そろそろ戻ろうか」
「うん」



 宿舎への帰り道の間も、私は三島君の手を離さなかった。
 水原さんはどんな気持ちで告白したんだろう? 私は告白も出来ないまま、こうして三島君の優しさに甘えている。

 ――卑怯だな。