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私のやんごとなき王子様 三島編

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「待て、小日向君」
「ん?」

 だばだばと醤油を注いでいると、三島君からストップがかかった。

「レシピには二人分で醤油大さじ3杯と書いてある。つまり200人分で大さじ300杯だ。大さじ300杯という事は4500ccであるから、つまりは4.5リットルになる。つまり」
「三島君、料理は目分量! きっちり作るより自分の普段の感覚で作っちゃった方が案外美味しかったりするものだよー」

 レシピ通りに計算する三島君を制して、構わず私はだばだばと醤油と酒を派手に大鍋に注ぎ込んでいった。

「う……うむ。小日向君、君は普段から料理はするのだろうか?」
「ん〜、お母さんのお手伝いしたり、お菓子作ったりする程度には。でも大丈夫! から揚げ位は余裕だから」
「そ……そうか」

 話をしながらも私はテキパキとタレを作り、鶏肉を漬け込んでいく。

「これで良し! 1時間くらい冷やすね〜」
「ああ」

 10人分位ずつをバットに移して、冷蔵庫内にズラーっと大量のバットを並べ終えてから、この間に衣用の片栗粉や油も用意する。

「慣れたものだな」
「見なおした?」

 なんて軽口を叩きながら微笑むと、三島君も温かな微笑みを返してくれた。

 タレが染み込むまでの間、少しだけ時間がある。私は気になっていた事を聞いてみる事にした。

「昨日――あの後結局三島君は海に戻ってこれなかったね」
「ああ、すまない。宿舎に戻ったら色々とやり残してあった仕事が気になってしまって」
「そっか……」

 宿舎から三島君が戻ってこなかったのが、私は本当は少し寂しかったんだよ――って言いたかったけど、それを言うとなんだか責めているような感じになりそうな気がして、私は黙って俯いた。

「……けれど、昨日は楽しかった。少しの時間だったとはいえ、俺はあんな風に海に入ったのも久しぶりだったし」

 俯いた私に三島君が優しく声をかけてくれる。