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Who killed nighingal

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いつのころだったかに、あまりにも優等生を気取っていたことを目に付けられ劣等生という言われもない評価を下された(これは心からそう思ったのです)青少年達からひどく言い嬲られたのを思い出してしまい、美しい時間をすっかり壊して私の心は留まったのです。
その閉ざされた世界は美しい世界でした。はかない世界でした。ないよりも優しい世界でした。ナイチンゲールの鳴き声が聞こえる穏やかな夜のような豊かな世界だと私は思っていました。しかし私が汚らわしいばかりに他者が見たその世界はひどくひどいものだったに違いありません。私だけがそれに気づかず、世闇の星を数え汚したのです。

他者に触れることは恐れません。私はかれからみたときにきっとなんてことない人の一人だから。言葉を交わすことも苦痛ではありません。私の言葉はすずめの声と同じように用件だけ残して印象を消してしまいますから。姿を見られてもどうてことはありません。街路樹が等間隔で並ぶのと同じようにあまたいる人の一人なのですから。そうなるようにずっと律してきたのですから。高みを目指しながらも礼儀を重んじた結果が私の場合それでした。
苦痛なのは耐えられないのは、私に好意を寄せる人に触れること、言葉を交わすこと、すがたを見られること。そういうことなのです。深く無償の好意であればあるほどその痛みは増します。
この原因を私はこう考えます。前提として私は汚らわしいものであり、かつ、酷く付加価値のない私を認められることに飢えている。私が私であるだけで許されることに酷く飢えているけれど小さな箱庭も幼い子どもの心も劣等感のある若い胸も全てを汚してまだ足りないほど穢れているという意識がある。そこに第三者が好意を持った状態で加わると、飢えた私の瞳にはその好意を与えてくれる人は神々しく見えうるのです。さながらシンデレラ・ハイでしょうか。雑踏に消え入りそうな「わたし」を見つけてくれた王子様との感動の対面を喜ぶのです。ここでおわればステキな物語としてあとは当人の努力や相性や運でしょうが、私は『汚らわしい』というう意識が根底にあるがために月とすっぽん豚に真珠と思うのです。実際はもっと酷い言葉のほうが適切でしょうがこれが精一杯でした。
神々しい無償の愛情の提供者が私の隣に居るということはいつかかれも私の病んだ心も止まった時計に絡められ貶めてしまうのではないかという恐怖、箱庭のように鳥かごのように崩壊と同時に烙印を再印して崩れるのかという圧迫感。それが私が好意を持つ相手に酷く恐怖を抱く原因ではないかと思うのです。
触れた指先からこの歪んで強すぎる飢餓が飲み込んで汚すのではないかという恐怖は分るでしょうか。悪くないと思っている私の肌は誰かの目を通せば愛欲の飢えでただれているのではないでしょうか。私は一番最初のゆりかごの夢で耳を閉ざしその妄想が過ぎ去るのをひたすら待つのです。
うつくしいナイチンゲールの声が懐かしい色の森で反響するのを思い出しながら、震えるほか知らないのです。
恋人達の夜を見守るナイチンゲール。美しい子守唄。いつもかわらないその声だけが私が美しかった頃へ引き戻してくれるのです。
懐かしい夢をくれるナイチンゲールをいったい誰が殺したの。
くつりとわらったのは私とよく似た影でした。



作品名:Who killed nighingal 作家名:鶏口