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私のやんごとなき王子様 利根編

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*****

「私も自分で着付け出来るようになりたいな」

 自宅を出て街へとやって来た俺達。さすがに若い男女が着物姿で歩いているのは珍しいらしく、道ゆく人が次々と俺達を振り返る。
 きっと珍しいというだけじゃなく、美羽が可愛いから見ているという条件も入るのだろうけど。

「着付けは姉さんに教えてもらうといいよ」
「じゃあ今度お願いしようかな。―――ついでに、華月君のお弟子さんにもなりたいな……なんて」
「華道の? 俺はまだ修行中だからね、そっちは父に教えてもらえばいい」
「……お父様じゃ意味無いの、華月君じゃないと」
「どうして?」

 きゅっと握られた手に隣りを伺うと、美羽は少し悲しそうな顔をしていた。一体どういう事だろう?
 俺が不思議そうな顔をしていたからか、美羽はチラリと俺を見上げると恥ずかしそうに小声で言った。

「だって、少しでも一緒にいたいんだもん」
「―――美羽」

 俺は何度彼女の言葉に心を打たれただろう。その温かな心を描き出したような着物の桜色と、美羽のほんのりと染まった頬が愛しくてたまらない。
 俺だってもっと一緒にいたい。その気持ちは同じだ。だけどそう言う訳にもいかないんだ。

「もう少し、お互い我慢しよう。我慢をしたら、きっとその後の嬉しさは大きいから」
「うん、ごめんね、わがまま言って」
「謝る事はないよ。俺だってずっと美羽と一緒にいたいんだから」

 思っている事をそのまま言っただけなのに、美羽は本当に嬉しそうな顔をして笑顔を向けてくれた。


「さ、着いたよ」
「え? ここって……」

 足を止めたそこは小さな宝飾店。
 そう、俺は今日、美羽にプレゼントを用意していたんだ。
 驚く美羽を促して入ったそこは、落ち着いた和の雰囲気漂う店で、あまりキラキラと派手に宝石をディスプレイしていなくて男でも案外入りやすい作りになっている。

「いらっしゃいませ、華月様。お待ち致しておりました」
「こんにちは。お願いしていたやつは、出来てますか?」
「はい」

 品の良い年配の男性店員がそう言って椅子を進めてくれて、俺達はその椅子に座る。

「か、華月君、一体どういう事?」