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私のやんごとなき王子様 利根編

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 利根君は約束通り夕食後部屋まで迎えに来てくれた。

 さなぎはとっくに米倉君と出かけていなかったけど、私はずうっとドキドキしっぱなしだった。利根君ファンのさなぎに言ったら、すっごい羨ましい! って言われたんだけど、彼氏がいる人が贅沢よね。

「この辺なら人も少ないみたいだね」

 そう言って腰を下ろしたのは林道を抜けた開けた場所だった。ふと下を見ると海岸にはたくさんの人影があって、花火が上がるのを今か今かと待ち構えている。
 去年さなぎと行った花火大会は浴衣を着てて、帰った頃には下駄で足の皮がむけて大変だった事を思い出していると、近くの海面からシュルシュルと第一発目の花火が打ち上がった。

 ドーーーン!!

 大音響を響かせ、心臓の内側から体全体を振るわせるような振動が走り抜けた。
 夜空に弾けた大きな色鮮やかな花火に、一斉に喝采が起こる。

「……綺麗」

 利根君と一緒にいるからだろうか。花火も見慣れた物や風景も一味違って見える……恋って偉大だな。さなぎも今頃米倉君と一緒に空を見上げているんだろうか。
 次々と重力に逆らって空へと投げ出されて行く花火の雨に、私は時間を忘れて魅入っていた。

「すごく近いね」
「うん、音も花火も目の前に迫って来るみたい」

 すぐ近くに利根君の体温を感じて、私はくすぐったい気持ちになった。ずっとこうして利根君の隣りにいられたらいいのに―――

「利根君」

 私は聞き覚えのあるその声に、思わずドキリとして顔を弾かれた。振り向くとそこには水原さんが立っていて、苦しそうに私達を見ていた。

「こんな所にいたのね、探したわ……ちょっと、いい?」

 途端に苦しくなる心臓。

「何かあったの?」

 首を傾げる利根君に、水原さんは近づいて腕を取った。その様子に胸がツキンと痛む。

「話しがあるの。少しでいいから、付き合ってもらえないかしら?」

 きっとこの間の告白の返事が欲しいんだと思った私は、立ち上がって林道の向こうを指差した。

「えっと、何か大事なお話みたいだし、私は違う所で見て来るね」
「待って、行かないで小日向さん」
「え? でも……」