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私のやんごとなき王子様 利根編

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 夜の海はとても静かだった。

 波の音だけがすぐ近くで聞こえてて、とても心地よい。

「この間皆で海に来た時、もっと話したいなって思ってたのに、俺が怪我した子を医務室に連れて行って戻って来たら小日向さんいなかったからさ」
「あ、ごめんね……」

 あの時私は水原さんに嫉妬して落ち込んで、とても海で遊んでいる気分じゃなかったから作業に戻った。利根君は私の事を気にしてくれてたんだな……だけど、水原さんの事は? 昨日あんなに必死な声で好きだって言ってた水原さんとは、今日は一度も話してなかったみたいだ。それは利根君が避けてたから? それとも、水原さんが?

 すごく複雑な気持ちになった。
 水原さんの事を考えると、こうやって利根君と二人で海を見ながら話しているのに、さっき部屋で話していたみたいな楽しい気持ちになれない。

「俺さ、去年始めて小日向さんと委員で一緒になった時、ちょっと嬉しかったんだ」
「え?」

 急に話し始めた利根君を思わず見上げる。
 利根君はじっと海の向こうを見たままで、話しを続けた。

「玲がさ、学園に入学してすぐの頃にマスコミに叩かれてすごく落ち込んでた事があって、芸能界をやめようか悩んでた事があるんだ」

 私は有名人である風名君のご両親の事や、当時バッシングされていた風名君の事を思い出して頷いた。

「その時俺は玲がすごく努力してるって知ってたから、いつも励ましてたんだ。玲は頑張ってる。だからいつかきっと、そんなお前の事を分かって応援してくれる人が現れるって……でもなかなか元気になってくれなくて、俺もちょっと落ち込んだんだ。ああ、俺は大事な友達一人元気づけられない駄目な男だ。玲の幼なじみとして失格だって―――」
「そんな―――」

 悲しそうにそう言う利根君の辛い気持ちが伝わって来て、私は悲しくなった。もし私が苦しむさなぎを助けてあげられなかったら、きっと辛いはずだもん。

「でもある日、急に玲が元気になったんだ。びっくりしたけどすごく嬉しかった。それで何かあったんだろうって思って聞いたら、同じクラスの女の子の言葉に励まされたって言って笑ったんだ……」
「同じクラスの女の子?」
「そう……小日向さん。君だよ」
「ええっ!?」