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私のやんごとなき王子様 利根編

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「いつも穏やかで優しくて、利根君と話しているととても落ち着くの……ずっと好きだった」
「水原さん……」

 やっぱり水原さんは利根君の事が好きなんだ。
 利根君は彼女が言うように穏やかで優しくて、そして必要な時に助けてくれる。
 風名君と幼なじみで、時には冗談を言ったり義憤にかられて腹を立てたりする、とても素敵な男の子……。

 私も、そんな利根君の事が――好きだ。
 きっと、去年委員で一緒だった時から好きだった。
 どうしよう。水原さんは利根君と一緒にいてもとてもお似合いで、私とは全然違う素敵な女の子だ。きっとすごくモテるだろうし、利根君が水原さんの事を好きだったら2人は付き合っちゃうんじゃないだろうか。

「今すぐ返事が欲しいとは言わないわ。でも、どうしても自分の気持ちを伝えたかったの……だから、私と付き合ってもいいか、本気で考えて欲しいの――」

 微かに震える声でそう言う水原さんに、利根君は何も言わない。
 今どんな状況なのか声だけで判断するしかない私は、今にも倒れそうな程クラクラとめまいがし出した。
 水原さんがどれほど勇気を振り絞って告白しているのか、その気持ちが分かるから。

「ごめんなさいね、呼び出して勝手な事言って……それじゃあ、また明日。おやすみなさい」

 その言葉を最後に、水原さんは部屋を出て行った。

 ドアが閉まる音がしてしばらく、ずっと微動だにしなかった利根君がボソリと何か呟いて、ゆっくりと部屋を出て行った。

 私はそっと机の下から這い出て来ると、椅子に倒れ込むように体を預けて大きく深呼吸をした。
 ずっと息を潜めていたおかげで、軽い酸欠になっていたのだ。

「はああーーーー」

 握っていた生地に視線を落とし、もう作業を続ける気力が失せている事に気付く。
 利根君は一体何と返事をするのだろう。
 自分は告白する勇気もないくせに、利根君と水原さんが上手く行ったら嫌だと本気で思っている。なんて自分勝手なんだろう。

「はあっ……」

 もう一度ため息を吐いて適当に机を片付けると、私は急いで部屋を出た。電気を消して鍵をかける。
 先生の所に鍵を返しに行かなくちゃいけないけど、面倒だな……早く部屋に戻りたい。なーんて、そう言う訳にもいかないもんね。